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民主党政権と排出権取引制度

2009年08月26日 三木優


 8月30日に実施される衆議院選挙の投開票に向けて、選挙戦も終盤に入ろうとしている。朝の駅前では各党の候補者が通勤する会社員に自らの政策を呼びかけたり、選挙カーから候補者の名前を連呼する風景はいつもの選挙と変わらない。しかし、今回の選挙は民主党が政権交代を目指して挑んでおり、各新聞社や雑誌の分析・推測ではそれが実現しそうだとしている。

 民主党のマニュフェストには、様々な政策が掲げられており、どれも実現すれば今の自民党政権の政策から大きな変化が生じることになる。私たちの専門領域である地球温暖化についても以下に示した政策目的・具体策が記載されており、2020年の中期目標やキャップ&トレード型の排出権取引制度は、実現すれば大きな影響がある政策である。

42.地球温暖化対策を強力に推進する

【政策目的】
○国際社会と協調して地球温暖化に歯止めをかけ、次世代に良好な環境を引き継ぐ。
○CO2等排出量について、2020年までに25%減(1990年比)、2050年までに60%超減(同前)を目標とする。

【具体策】
○「ポスト京都」の温暖化ガス抑制の国際的枠組みに米国・中国・インドなど主要排出国の参加を促し、主導的な環境外交を展開する。
○キャップ&トレード方式による実効ある国内排出量取引市場を創設する。
○地球温暖化対策税の導入を検討する。その際、地方財政に配慮しつつ、特定の産業に過度の負担とならないように留意した制度設計を行う。
○家電製品等の供給・販売に際して、CO2排出に関する情報を通知するなど「CO2の見える化」を推進する。

出所:民主党 政権政策 Manifesto2009


 民主党政権が実現するか否かは、選挙が終わってみなければわからない。しかし、今の時点において、重要なことは地球温暖化に関連したリスクの中でも直接的に企業の事業内容や収益に影響を与え、短中期的な影響の大きい規制リスクが現実になる可能性が高まっており、それに対する備えが出来ている企業と出来ていない企業の差が、顕在化しようとしていると言うことである。

 我々が企業との対話で感じることは、大半の企業は、現状のCO2排出量を把握することや現状の法律の範囲ですべき事はしっかり出来ている反面、自社がどの程度までCO2排出量を削減できるか、排出権取引制度が導入された場合に、どのような財務的な影響があるのかと言った、規制リスク対応が出来ていないと言うことである。電機電子業界や各業界のトップ企業では、規制リスクに対して高い意識を持っており、何年も前から取り組んでいる企業や私たちのコンサルティングを受けて頂いた企業もある。

 「何もしなくても大丈夫」と思っている企業・担当者もまだまだ多いと思われる。結果的に民主党政権が実現せずに、規制の強化が無かったとしても、それは「たまたま」救われただけであって、規制リスクに対する準備が出来ていたという事ではないのである。環境担当の皆さん、選挙の次の日に社長から突然呼ばれて「当社では、どの程度までCO2排出量が減らせるのか?」と質問を受けた時に、具体的な対策と削減可能量を説明できますか?
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