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コラム「研究員のココロ」

企業のコア・コンピタンスとしての「経営戦略力」を鍛える<第3回>

2007年04月27日 谷口知史


企業が「経営戦略力」を鍛えるためには、トップマネジメントが「意識と方法論」の両面において、自社の課題を正しく整理することが要件となる。「トップマネジメントとコンサルタントとのダイアログ」(テーマ別Q&A)から、そのヒントを見出して頂きたい。

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<FAQの構成>
テーマ/ダイアログの主たる論点
Q:トップマネジメントからのメッセージ
A:コンサルタントからのメッセージ
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テーマ7.戦略策定部門のリソース・スキルの不足に対して

Q7:当社は、戦略策定部門のリソース・スキルの不足が実状です。

A7:コンサルティングの現場における私たちの実感としても、経営戦略策定部門に経営資源としての人材を重点配置している企業は必ずしも多くはありません。あるいは、企業規模・業容等から見て、経営戦略策定部門の設置が必要と思われる企業の中にも、該当する部署が未設置のところも少なくありません。そうした事象から、我が国企業における「戦略不在」論や「戦略不要」論が長らく議論されて来たのだと考えられます。
 私たちのメイン・コンセプトおよびメイン・テーマである「経営戦略力」を鍛えるためにも、本メッセージを頂いた御会社のみならず、多くの企業におかれて、「経営戦略策定部門のリソースおよびスキルの確保・育成・強化」を図って頂きたいと、私たちは考えています。
 例えば、10年先を展望した長期経営ビジョンに基づき、それまでに中期3カ年経営計画を3次に亘り実施することにより、「戦略策定部門のリソース・スキルの不足」を補完しようとされているクライアントのサポートを私たちが行っている事例もあります。そこで私たちが実感するのは、「戦略策定部門のリソース・スキルの確保・育成・強化」には相応の(あるいは相当の)時間を要するということです。
 上記の事由からも、私たちは「中期経営計画が、トップマネジメントにとっての最重要プロジェクトである」と認識しており、「経営戦略策定部門のリソースおよびスキルの確保・育成・強化」を目的とした中期経営計画の策定に取組まれることをお勧めしたいと考えています。

テーマ8.戦略策定・実行の風土・ノウハウの不足に対して

Q8:当社は、戦略策定・実行を行う風土が今まで無く、従ってノウハウの蓄積もありません。

A8:本メッセージも、我が国企業における「戦略不在」論や「戦略不要」論が長らく議論されて来たことを示すものだと考えられます。
私たちのメイン・コンセプトおよびメイン・テーマである「経営戦略力」を鍛えるためにも、本メッセージを頂いた御会社のみならず、多くの企業におかれて、「経営戦略策定および実行を重視する企業風土の醸成およびノウハウの蓄積」を図って頂きたいと、私たちは考えています。
 (前述のとおり)10年先を展望した長期経営ビジョンに基づき、それまでに中期3カ年経営計画を3次に亘り実施することにより、「戦略策定部門のリソース・スキルの不足」を補完しようとされているクライアントのサポートを私たちが行っている事例もあります。そこで私たちが実感するのは、「戦略策定・実行を重視する企業風土の醸成およびノウハウの蓄積」には相応の(あるいは相当の)時間を要するということです。
 上記の事由からも、私たちは「中期経営計画が、トップマネジメントにとっての最重要プロジェクトである」と認識しており、「経営戦略策定実行を重視する企業風土の醸成およびノウハウの蓄積」を目的とした中期経営計画の策定および実行に取組まれることをお勧めしたいと考えています。

テーマ9.強い組織の会社創りのために

Q9:当社では、「分業と協業と調整」、「権限と責任」という部分において、組織としてどうしても不明確になりがちです。組織としての落とし込みが弱い点が悩みです。そのため、組織力が上がりません。幸い、成り行きではある程度の成果は出ていても、組織としての達成感に欠けているのが現状です。今後の変化の激しい経済情勢の中で、強い組織の会社創りに取組んで行きたいと思っています。

A9:私たちは、「経営戦略」の定義を『市場の中の組織としての活動の長期的な基本設計図』としています。その意味では、本メッセージは「経営戦略力」を鍛えるための要諦に言及されたものと考えられます。
優れた企業では、組織の目的と戦略が末端まで浸透しているため、PDCAサイクルが本来的な効果を発揮できると評価されています。「組織としての落とし込みを強める」・「組織力を上げる」・「組織としての達成感を増す」ために、「全体最適を重視する組織」をコンセプトとした仕組みづくりに取組まれては如何でしょうか。
 具体的な施策レベルでは、「社内組織の改編」・「会議体の見直し」・「人事制度の見直し」・「管理会計ルールの見直し」等の広範な代替案が考えられますが、企業文化に即したスピード感で改善さらには改革を進められることを期待します。
「強い組織の会社創り」への取り組みとして、バランスト・スコアカード(BSC)を活用される企業が増えています。経営戦略から部門・担当者単位のアクションプランへ落とし込む方法論のひとつとして検討されることをお勧めします。

テーマ10.反省しない企業体質をどのように変えてゆくか

Q10:当社では、表面的なP・Dに終始しており、C・A(振り返り・分析・報告書としてのまとめ)が欠落しています。環境変化への対応以前に、反省しない体質をどう変えてゆくかが課題です。

A10:本メッセージは、コンサルティングの現場で私たちが直面することの多い事象のひとつです。中期経営計画の策定・実施のサイクルを複数回重ねて来られた企業において、こうした傾向が強いというのが私たちの実感です。
 「表面的なP・Dに終始」するのは、「中期経営計画を策定し、実行すること」が目的化されている場合に頻出する事象です。その意味で、再度「P」および「D」を『何故(WHY)』・『何を目指して(WHAT)』行うのかについて、トップマネジメントが中心となって社内で意思統一を図られては如何でしょうか。そうしたアクションを通じて、「P」および「D」を『どのように(HOW)』行うのかについて過度なエネルギーを費やしてしまう傾向を修正できるものと考えられます。
 「C・A(振り返り・分析・報告書としてのまとめ)の欠落」に対しては、経営戦略の管理プロセス全体を統括する「組織」・「機能」・「場」といった仕掛けを検討・実施されることをお勧めします。
 「反省する企業体質」を醸成することは、「経営戦略力」を鍛えて「当たり前のことを当たり前にできる」企業になることに結びつくため、具体的な方法論レベルでの見直し・再構築を行われることを期待します。PDCAサイクルの機能化・高度化のための代替案を以下に例示します。
  1. CFT(クロス・ファンクショナル・チーム)の組成(あるいは見直し)

  2. BSC(バランスト・スコア・カード)の活用(「戦略からアクションへ」というコンセプトを重視)

  3. 戦略管理オフィス(OSM)の設置

テーマ11.CHECK・ACTIONの定着のために

Q11 当社の中期経営計画は、Pのためにプロジェクトを設け、全組織的に進めていますが、C・Aが定着しません。そこを検討する機関を考えていきたいと思います(現状、日常的にPDCAで仕事をする組織になっていない弱さがあります)。

A11:本メッセージを頂いた御会社では、「日常的にPDCAで仕事をする組織になっていない弱さがある」と自己評価されていこともあり、「C・Aが定着しない」ことが、「P・Dのプロセスに起因していないか」を再確認されることをお勧めします。

(1)「Pのためのプロジェクト」について、再確認のためのチェック・ポイントを以下に例示します。
  1. 中期経営計画策定に対するトップマネジメントの強いコミットメントと明確なメッセージ

  2. 上記1をサポートするミドルマネジメント層の強いコミットメント

  3. CFT(クロス・ファンクショナル・チーム)の組成

  4. BSC(バランスト・スコア・カード)の活用(「戦略からアクションへ」というコンセプトを重視)
(2)「D」・「C」・「A」のステップについて、再確認のためのチェック・ポイントを以下に例示します。
  1. 「C」・「A」を確実に行う仕掛けの具体化(「組織」・「機能」・「場」)

  2. 戦略管理オフィス(OSM)の設置

 本メッセージに記されているとおり、「C」・「A」の定着を図るための機関に関しては、OSMのコンセプトを具体的にルール化されることが望ましいものと考えられます。具体的な方法論レベルでは、かなり先進的なテーマといえるため、是非とも具体化されることを期待します。

テーマ12.戦略・戦術の整合性とトップマネジメントの関わり方

Q12:当社では、戦略の基本のところは大きく変わらないのですが、戦術・施策についてトップ自らが打ち出すせいか、変更・ブレ・戦術間の不整合が起こることがあります。ひとつの戦術についても、P・D・Cのサイクルを回すまでは、似た内容の異なったアプローチ(戦術)を投入すべきではないと思いますが如何でしょうか?また、それ以外の他のやり方はあるのでしょうか?

A12:本メッセージを頂いた御会社は、「トップ自らが戦術・施策レベルまでコミットする」タイプのようですが、その逆に「トップ自らが戦略レベルにコミットしない(下位権限者に『実質的にお任せ』)」タイプの企業にも、私たちは数多く出会って来ました。いずれのタイプの企業も、「経営戦略力」のコンセプトからは、具体的な改善・改革の方向性の検討を行うことが望ましいものと考えます。
基本的には、「経営戦略の階層(トップマネジメントは最上位層を司る)」および「組織における権限・責任のバランス」というテーマに帰するものと考えられます。
本メッセージにより示されている問題提起に対する私たちの意見は、下記のとおりです。
  1. 「経営者の基本的役割」に則して、トップ自らが『戦術的意思決定』までを行うことは合理的な状況ではない(戦術・施策レベルの意思決定は、下位権限者に委ねることが望ましい)。


  2. 「経営戦略のPDCAサイクルの確立」の観点から、『階層別PDCAサイクル』の徹底・定着を図る必要性が高い(戦略レベル・計画レベル・アクションプランレベルでの各PDCAサイクルの頻度・スピードは異なる)。
 
上記1.2.の内容が組織内で浸透すれば、(代替案としての)「それ以外の他のやり方」を検討する必要性がなくなるものと考えられます。

次回、第4回へ続く

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