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第2回 工事進行基準の導入でシステムベンダーとの関係が変わる? 【藤田 芳夫】(2008/10/7)

2008年10月07日 藤田芳夫


1.ソフトウェア開発にも工事進行基準が適用

 2009年4月1日以降に開始する事業年度より、一定の要件を満たす工事契約については工事進行基準が適用されることとなった。上場企業や会社法上の大企業など公認会計士の監査を受ける企業は、工事契約に係る工事収益および工事原価を進行基準で計上することとなる。工事契約とは一般に、土木、建築、造船など、長期にわたるプロジェクト業務で仕事の完成に対して対価が支払われる請負契約である。ここで問題となるのは、受注制作ソフトウェアも工事契約に準じて工事進行基準の適用対象となる点である。

2.工事進行基準は他人事ではない

 土木・建築業、プラント業など、工事進行基準が適用される企業は特定の業種であり、その他の企業にはあまり関係がないように見える。たしかに、工事業者などが会計処理をどう行っていようが、発注者側の会計処理がこれまでと大きく変わることはなく、一般の企業にとっては関係ないと思うかもしれない。しかし、工事進行基準は工事の発注者側にも意識の変革を求めるものなのである。特に、ソフトウェア開発は従来と大きく変わる可能性がある。
 大規模なシステムを自前で開発できる企業でない限り、ソフトウェア開発は専門のシステムベンダーに委託している。2009年4月期より、多くのシステムベンダーは工事進行基準への対応を行うこととなるだろう。工事進行基準適用ベンダーにソフトウェアを発注する場合、発注者にとってもっとも大きな影響は、ベンダーから厳密な契約締結を求めてくるということなのである。

3.あいまいな契約は断られる

 工事進行基準の適用条件は、「工事の進行途上においても、その進捗部分について成果の確実性が認められる場合」(企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」平成19年12月27日、企業会計基準委員会)となっている。「成果の確実性が認められる」ためには、以下の3点を信頼性を持って見積ることが出来なければならない。

 (1)工事収益総額
 (2)工事原価総額
 (3)決算日における工事進捗度

 工事収益総額を信頼性を持って見積るために、ソフトウェア開発の場合、開発フェーズごとに細分化して見積りを行うなどの対応をとると考えられる。要件定義、基本設計、詳細設計、プログラミング、テスト等、それぞれごとに工数、金額を明確にして契約するのである。総額でこれくらいといった契約、ハード込みでいくらといった契約は、ベンダーから拒否される可能性がある。要件定義にかかる時間が見積れない場合は、要件定義については時間単価で契約を求めてくるかもしれない。要件定義が固まらないままでの開発着手なども、拒否される可能性が高い。

4.よりよい関係を結ぶために
 工事進行基準は発注者にとって悪い話ばかりではない。システムベンダーは工事進捗管理を厳密に行うために、プロジェクト管理を高度化すると考えられる。適切なプロジェクト管理は、ソフトウェア開発作業のスケジュールの遵守、品質の向上につながる。工事進行基準をリスクではなくチャンスと捉えて、システムベンダーと透明性の高い適切な関係を構築していくことこそが、発注者・受注者双方にとって望ましいことなのである。
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