しかし、株主主体のコーポレートガバナンス構築には落とし穴がある。オーナー企業(=オーナーが経営者であり大株主である企業)に対してコーポレートガバナンスを如何に機能させるかという視点が不十分なのである。実証研究においては、経営者による株式保有は、経営者と株主との利害対立を緩和し、企業価値の増大に貢献する(Jensen and Meckling (1976)) 反面、内部経営者の保有比率が高くなるに従い、外部からの圧力を受けにくくなるため、トップ経営者の交代と株価パフォーマンスの関連性が薄くなる(=業績不振や経営陣の暴走があっても、経営陣は交代させられることはない)。(Denis, Denis and Sarin(1997)) といわれている。
参考文献: Jensen, M.C. and W.H. Meckling (1976) “The Theory of the Firm: Managerial Behavior, Agency Costs and Ownership Structure, “ Journal of Financial Economics, 3, PP.305-360
Denis, D.J., D.K. Denis and A.Sarin(1997) “Ownership Structure and Top Executive Turnover, “ Journal of Financial Economics, 45,pp.193-221