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シェアードサービスに関する定期的評価のあり方

2008年02月14日 宇賀村泰弘、豊田憲和


目的
 シェアードサービスという経営手法を推進する企業の課題は、その形態の特性から複雑になっているケースが多く見られます。また、関係者も多く、組織が明確に区分されることにより、考え方の壁を生むこともあります。そのため、課題を正確に把握するためには、「シェアードサービスの当初の目的・狙いとの整合性」、「現状の内部・外部環境との整合性」の二面からの課題整理の必要性が存在します。そうすることで、複雑化している課題を、多面的、網羅的、かつ構造的に把握することができ、課題解決の方向性及び取り組む上での優先順位を明確化することができるのです。

 ここで一部紹介する評価の枠組みは、シェアードサービスという経営手法を推進する企業の課題を網羅的かつ簡易に把握し、課題解決の方向性、優先度を明確にすることを目的として構築されています。

 具体的には、シェアードサービスを統括する部門(経営企画等)、シェアードサービスセンター(以下 SSC)、及びサービス受益者による内部視点での評価、及び外部視点での評価を用いて総合的に課題を把握し、優先順位付けを行うことを前提としています。

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戦略
 戦略面における診断項目の一つに「グループ戦略との相関の有無」が挙げられます。グループでの方向性の中での位置づけが明確にならなければ、本来の効果は得られないだけでなく、SSC従業員の理解を得ることも難しくなります。その他にも、「経営者のマインド」、「業務最適化思考の有無」、「資源配分の適切性」、「目的の時間軸における整合性」などの視点での評価を行う必要があります。

 
組織
 組織面における診断項目の例としては「組織文化の成熟度」が挙げられます。シェアードサービスは、必ずしも全従業員にとって都合のよい制度ではありません。そのためシェアードサービス推進のためには、部分的な最適化ではなく、グループ全体での最適化を考えるという思考文化が各スタッフに根付いている必要があります。他にも「組織デザインの適正性」、「組織目的の理解浸透」、「組織責任と権限の明確化」などの視点での評価を行う必要があります。

 
業務プロセス
 業務プロセスの面からは「業務プロセスの標準化」が挙げられます。シェアードサービスの効果を得るためには、業務を集約するだけではなく、標準化をして効率性を上げることが必要になるからです。この他には「レスポンスタイム」、「品質」、「最適価格」といった視点での評価が必要となります。

 
人事
 人事面からは、「人材マネジメント体制の整備状況」が挙げられます。SSCが常に一定レベルのサービスを提供するためには、一定レベルの従業員が常にSSCに配置されていることが重要となります。また、SSCという別組織へ異動となる従業員のモチベーションを維持するためには、柔軟な異動体制を確保する必要があります。他には「教育制度の充実度」、「人事評価の納得性」といった視点での評価を行う必要がある。

 
管理
 管理面からは、例えば「目標設定の状況」が挙げられます。管理上、目標の設定は重要ですが、ただ設定するだけではなく、目標が達成可能なレベルのものであることや目標が戦略にリンクしていることが重要となります。この他には「PDCAサイクルの実効性」、「目標管理制度の整備状況」、「評価制度の適正性」といった視点で評価する必要があります。

 
情報システム
 最後に情報システムの切り口です。SSを成功させる一つの要因としてIT利活用の最大化が挙げられます。まず第一に、見るべきは「システム化範囲の最適度合」です。実現する業務と照らし合わせ、システムを適切な範囲で利用していなければなりません。次いで、個別に「システム機能の充実度」を見る必要があります。これは業務の流れ、方法などにマッチした機能が実現されているかを見るものです。その他には、「資産の共有」、「コミュニケーションの最大化」などがシステムで補完できているかを確認することがあります。

 
まとめ
 シェアードサービスの推進は想定以上に難しいものです。しかし明確な目的を持ち、適切に運用されるならばそれは、大きなメリットをも齎しえるのです。

 しかし、実態としてはシェアードサービスを導入したが、当初想定した効果が出ていない。効果が出ていないことはわかるが、なぜ出来ていないのかがわからないといった課題を抱えている企業は多いのではないでしょうか。

 そうした課題認識を抱える企業は、上記に紹介いたしました評価・分析の切り口をご参考にして、シェアードサービスの見直しを行ってみてはいかがでしょうか。
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