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情報通信機器・家電製品とエネルギー消費

2009年05月25日 青山光彦


 5月13日に発表されたIEA(国際エネルギー機関)による“Gadget and Gigawatts”では、世界的にみて家庭における電力消費量の急増を問題として取り上げ、特に情報通信機器や家電製品によるエネルギー消費量の増加を問題視している。このため、報告書では、各国政府に向けてこうした機器の省エネ化を推進するよう警鐘を鳴らしている。
 具体的には以下のとおりである。

●世界では最低エネルギー消費効率基準(MEPS: Minimum Energy Performance Standard)や省エネラベル(Energy Performance Label)などの政策により家電製品のエネルギー原単位削減に成功している。
●一方で、家庭におけるエネルギー消費量は増加傾向である。家庭における電力消費量のうち、情報通信機器や家電製品による割合は15%程度だが、この割合も急拡大中である。
●これは、エネルギー効率は向上したもののこうした機器の大型化・多機能化等によって、エネルギー効率向上による削減分を打ち消すほどのエネルギー消費拡大が進んだためである。
●このままでは情報通信機器や家電製品によるエネルギー消費量が2022年までに倍増、2030年までに3倍、1,700TWhに至る。これにより2030年までに約280GWhの発電容量の増加が必要となる。
●これに対して、対策シナリオを2ケース想定し、最小コストシナリオ(LLCC:least life-cycle cost=消費者への追加コストなし)を適用すれば2030年のなりゆきベースの値から30%削減、最高レベル技術適用シナリオ(BAT:best currently available technologies)を適用すれば半減が可能である。
●求められる政府のアプローチとして
 (1)産業界と連携した長期的な政策目的の設定
 (2)政府ならではの政策のベストミックス
 (3)商品ごとではなく機能ごとの政策アプローチ
 (4)機器における電力管理機能の充実
 (5)機器のサイズに適する(厳しい)エネルギー性能の設定
 (6)エネルギー効率向上に向けた政策実現のための国際協力の推進(特に電子機器)が挙げられる。

 省エネ家電については、日本でも実は、温暖化対策の政策面でこの矛盾と戦っている。家電製品等の省エネ性能は10年前と比べて格段に進歩したものの、家庭における電気機器の台数自体が大幅に増加したのだ。例えば、皆さんの家庭において、10年前と比べてTV(液晶、プラズマテレビ等)やDVDレコーダー、エアコン、パソコンなどの台数は増えていないだろうか。家電製品の普及が各家庭で進んだ結果、民生家庭部門における二酸化炭素排出量は増加の一途をたどる結果となっている。
 こうしたことは全世界のCO2排出量削減のための目標設定の議論でも同じことがいえる。いわゆる「エネルギー・CO2原単位目標」と「総量目標」の議論である。年末にはCOP15を控え、2013年以降のポスト京都について先進国、新興国の目標設定などについて議論されることとなる。
 温暖化問題は政治的な問題も絡むため、理想論が単純に通るわけではないが、大気中の温室効果ガス濃度を450ppm程度に抑え、そのために2050年までに半減させる、あるいは世界全体の排出量を自然界の吸収量と同等レベルへ押さえ込むという長期的な視点に立った上での合理的な政策決定を期待したい。
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