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欧州の家庭部門、業務部門における温暖化政策

2009年02月09日 佐々木努


 欧州の温暖化政策としては、欧州排出量取引制度(EU-ETS)が有名であるが、本コラムでは、排出量取引制度以外の欧州の温暖化政策について紹介したい。

 欧州では、2008年12月17日に「EU climate and energy package(気候パッケージ)」が承認され、法制化に向けて動き出すこととなった。この気候パッケージにおいては、温室効果ガスを「1990年比で20%削減」(=「2005年比で14%削減」)することを掲げている。この目標は、EU-ETSとEU-ETSでカバーされていないセクターのそれぞれの目標で構成されており、EU-ETSでは「2005年比で21%削減」、非EU-ETSセクターでは「2005年比で10%削減」としている。各々罰則規定を備えた、削減規制である。

 非EU-ETSセクターとは、自動車運輸、オフィス、小売、小規模製造業、農業、家庭などの分野を指す。EU-ETSの対象範囲外であったこれらのセクターに対して、気候パッケージでは各国政府への削減義務を課したのである。欧州全体の削減目標は「2005年比10%」であるが、これを一人当たりGDPに応じて各国にブレイクダウンしている。例えば、デンマークやアイルランドは20%削減、英国やオランダは16%削減と大きな削減目標が設定されている。一方で、ブルガリアは20%増、ルーマニアでも19%増など、増加を許容する設定がなされている国も存在している。

 日本では、運輸を除くこれらセクターの排出量は増加傾向にある。対策の必要性が叫ばれて久しいが、有効な打ち手が見つからず、増加を許容してしまっているのが現状だ。実は、EUも状況は似ており、非EU-ETSセクターの排出量は、BaU(Business as Usual)で「2020年には2005年比で2.4%増加する」と予測されている。今回の気候パッケージでは、これを10%削減しようというのである。

 気候パッケージにおいては対策手法について項目は記載されているが、具体的な政策については触れておらず、具体的であるとはいえない。しかし、業務部門や家庭といった非EU-ETS対象セクターへの削減規制は、EU-ETSと同じくらいインパクトが大きい政策と言えるのではないだろうか。今後、各国政府が打ち出す具体的な政策は注目すべきだろう。
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