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カーボンフットプリントと算定方法

2008年10月16日 青山光彦


 これまでのコラムで何度か触れている「カーボンフットプリント」表示制度に関し、現在、国において検討が進められていますが、10月9日より経済産業省(商務情報政策局流通政策課)から「カーボンフットプリント制度の在り方(指針)」(中間とりまとめ案)についてのパブリックコメントが開始されています(10月28日締め切り)。
 このほか、CO2排出量の把握という観点では、並行して環境省による「温室効果ガス見える化推進戦略会議」や、環境省・日本カーボンオフセットフォーラム(J-COF)による「カーボン・オフセットに係る透明性の確保、第三者認定及びラベリングに関するワークショップ」などにおいて検討が順次進められています。

 今回、これらの取り組みの概要や目的、カーボンフットプリントの算定方法の特徴を次のとおり整理しました。

<概要および目的>
◆温室効果ガス見える化推進戦略会議
・CO2排出量の可視化やカーボン・オフセットの制度化などについて検討
・主に消費者・ユーザ-視点で様々な目的ごとに算定方法、バウンダリを設定
 -自らの排出量の把握による自己削減を目的(家庭・スーパー)
 -商品・サービス選択を促すことを目的(家電・IT)
 -カーボン・オフセットでの活用を目的(イベント・旅行・リース)
◆カーボン・オフセットに係る透明性の確保、第三者認定及びラベリングに関するワークショップ
・消費者等に対するカーボン・オフセットの取組に係る透明性を確保
・カーボン・オフセットの取組に係る情報提供ガイドラインの作成、第三者機関による認定スキーム構築、第三者機関認定のラベリングスキームの構築を目的
・ J-COFより「カーボン・オフセットの対象活動から生じるGHG排出量の算定方法ガイドライン(素案)」提示。
◆カーボンフットプリント制度の実用化・普及推進研究会
・算定・表示方法、表示の信頼性確保、普及促進方法について検討(マークの公募等)
・CO2排出量の「見える化」によって、消費者が的確な選択を行うための情報を提供することを目的
・日用品や食料品などの非耐久消費財を最初のターゲット

<カーボンフットプリントの算定方法>
◆温室効果ガス見える化推進戦略会議
・商品サービスごとに、設定方法を区分(3レベル)
・産業連関表による環境負荷原単位データブック(3EID)による算定と商品・サービスごとの個別積み上げ計算とを使い分け
◆カーボン・オフセットに係る透明性の確保、第三者認定及びラベリングに関するワークショップ
・オフセット対象の活動・商品・サービスのごとに活動量と排出係数の要素に分割し、それぞれ設定方法を区分(3レベル)
・基本、積み上げ計算で、活動量、排出係数をデフォルトか実測値かで区分
◆カーボンフットプリント制度の実用化・普及推進研究会
・商品・サービスごとに個別のサプライチェーン分析によって積み上げ計算

 こうしてみると、それぞれの検討会議において、カーボンフットプリントという情報をいかに活用するのか、そのデータから何をアピールしたいのかが異なっているため、当然ながら、算定方法にもばらつきがあることがわかります。
 例えば、産業連関表による環境負荷原単位データブック(3EID)では、CO2排出量は基本的に商品価格に依存するため、例えばペットボトル入りのジュースと缶入りのジュースとでどちらがCO2排出量が少ないのか、といった把握はできませんが、家計が購入するサービス・商品のうち、どのようなサービス・商品購買行動がCO2排出量が多いのか、ということを明らかにすることが可能です。
 一方、同じ商品グループ(例えばA社のジュースとB社のジュース)とで、どちらがCO2排出量が少ないのか、ということを把握するためには、個別のサプライチェーン上でのCO2排出量の把握し積み上げ計算が必要となります。例えば、原材料を国内の生産現場近隣から調達するのか、国外から空輸等で調達するのかによって大きくカーボンフットプリントは異なってきます。

 このように、算定方法にも様々な方法がありますが、その精度は如何にせよ、いずれにしてもカーボンフットプリントを「見える化」することに意義があるといえます。
 まずは、普段の生活あるいは商品やサービスの購買において、常にCO2が排出されているということを認識すること、それから、その具体的な量をイメージするために、データを定量的に把握することが、われわれ市民がCO2削減に取り組む第一歩となるのではないでしょうか。
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