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森林保全とCO2削減

2008年06月20日 佐々木努


 先日、「セブン&アイHDがCO2排出抑制へ『原生熱帯林保全プログラム』を来春から開始」との発表があった。セブン&アイHDが国際熱帯林木材機関(ITTO)を通じて、アフリカやアジア、ラテンアメリカなどの熱帯林8,000haの保全活動を実施するというもので、初年度の2009年度には約1億円を提供する。次年度以降の活動は初年度の結果を受けて検討するようだ。この活動の効果は、CO2削減量で約120万t-CO2になるという。

 これはREDD(Reduction of Emissions from Deforestation in Developing Countries:途上国における森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減)という考え方の具体的な取り組みであり、民間企業としての取り組みでは世界初である。

 REDDの取り組みは、「特定地域を保全しても別の場所で森林破壊が行われるだけではないか」といった指摘(=リーケージの問題)や、「保全できていることをどのように確認するのか」(=モニタリングの問題)などの問題を抱えている。さらに、回避できたCO2削減量を排出権として付与する場合には、「保全活動が実施されなかった場合には森林減少がどの程度起こっていたのか」といった問題(=レファレンスケースの設定)や「自然に生じた山火事や豪雨被害の場合はどうするのか」など、乗り越えるべき障壁が存在する。

 そうした課題があるにも関わらず、近年森林保全の動きが活発になってきている背景には、我々の森林に対する「受容性」の高さがあるのではないだろうか。(詳細は、「【2008/5/15】見える排出権、見えない排出権」などの筆者の過去のコラムを参照いただきたい。)

 REDDの取り組みについては、世界銀行など国際的な機関が主導して検討されている中で、民間企業が資金を拠出して取り組むことは非常に意義がある。CDMでは、その厳格な制度設計のため、民間資金の森林保全・植林への流れを作ることに失敗した。森林保全の動きを実現するためには、REDDの制度設計では民間企業が価値を見出し、利用しやすいものにしなければならないように思う。

 今回のセブン&アイHDの発表を機会に、「企業と森林」について考えてみてはどうだろうか。
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