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コラム「研究員のココロ」

「“絵に描いた餅”の中期経営計画からの脱却」のすすめ<第5回>
~目標と実績の乖離を埋めるために~

2008年10月31日 藤田芳夫


1.はじめに

 “絵に描いた餅”の中期経営計画からの脱却に関するリレー連載の第5回である。中期経営計画の実行において、目標と実績の乖離に悩む企業も多いと思われる。今回は、経営目標と実績の乖離を埋めるために、PDCAのCとAを効果的にまわす仕組み・仕掛けについて考察する。

2.なぜ目標が達成できないのか

 多くの中期経営計画では、全社の目標が達成できたか否かは、結果が出てから評価しているのではないだろうか。例えば3ヵ年の中期経営計画の場合、初年度の目標値が未達であれば、2年目に改善方針を織り込んだ新たな中期経営計画を作成する、というように毎年チェックし、ローリングしていくことが考えられる。しかし、1年目の結果が出てから改善するのでは、3年目に目標を達成するには遅いのではないか。また、現実問題としては改善ではなく、目標未達の言い訳しか出てこずに、結果3ヵ年計画は“絵に描いた餅”になってしまうのではないか。筆者は、目標と実績の乖離の要因の一つとして、評価の仕組みに大きな問題があるのではないかと考えている。

3.先行指標による目標管理

 中期経営計画を実行するに当たっては、多くの場合、組織全体の目標を各事業部門にブレイクダウンし、さらに部や課、場合によっては個人のレベルまで落とし込みをする。全社目標の達成は、個々の細分化された目標の合計となる。筆者が課題と考える点は、細分化された目標管理の仕組みが十分に機能していないのではないか、ということである。そこでまず、目標管理の仕組みとしてKGIとKPIの設定を考察してみたい。

 細分化された目標は、KGIとKPIを適切に設定することにより、実績の乖離を早期に把握し、早期に改善することが可能となる。本稿では、KGI・KPIを以下のように定義することとしたい。


KGIは戦略目標の達成度合い(ゴール)を定量的に示す指標であり、KPIは戦略目標達成のためのプロセスの実行度合い(パフォーマンス)を中間的にかつ定量的に示す指標である。KGIの例としては「売上高」「利益率」「成約件数」などがあり、KPIの例としては「引き合い案件数」「顧客訪問回数」「歩留まり率」「解約件数」などがある。

 KPIを明確に設定することによって、結果だけでなく先行指標の評価が可能となる。先行指標を管理することによって、結果が出る前に早期に課題が把握でき、早期に改善が可能となる。また、KGIとKPIの関係を明確にすることで、先行指標と結果との整合性を確認し、KPIの妥当性も評価できる。
 実際の適用方法としては、バランス・スコア・カード(BSC)を作成し、ブレイクダウンしていくとともに、ブレイクダウンしたBSCにKGI・KPIを設定する方法が考えられる。個人レベルまでBSCを作成する場合は、業績評価につなげることも考慮すればよいだろう。

4.階層別目標管理の仕組み

 BSCを細分化し、KGIとKPIを設定したとしても、適切に評価する仕組みがなければ意味がない。例えば経営企画部門は、毎月事業部単位での目標・実績管理は行っていると思うが、部、課、個人のレベルでの管理は各部門に任せているだろう。目標・実績管理は、下の階層になるほど自己評価に近い形となる。自己評価だけでは、目標が達成できていないとしてもどう改善すればよいかわからず、結果として未達の言い訳しか出てこなくなる。
 自己評価が悪いというのではないが、自己評価に加えて独立的な立場での評価の仕組みを加えてはどうだろう。例えば、経営企画部門などが「戦略管理オフィス」(OSM:Office of Strategy Management)の役割を担い、特に目標と実績の乖離の大きな部門に対して、独立した視点で再度評価・検証するのである。月次でKPIを追いかけ、必要に応じてOSMが検証し、改善の提案まで行えば、目標と実績の乖離を埋めることも可能なはずである。

5.おわりに

 CとAを効果的にまわすためには、独立的立場で評価を行う評価者の能力も大きなポイントである。目標と実績の乖離の原因を把握し、適切な改善提案を行うためには、評価者の能力向上が必須となる。経営企画部門は戦略・計画の立案・実行だけではなく、評価・改善も含めた、PDCAすべてにおいてのプロフェッショナルとなることが求められるのである。

以上

*筆者の所属する経営革新クラスターでは、経営コンサルタントと企業の経営企画部門責任者がそれぞれの立場からの「異見と知見」を交換できる場を目指して、本年10月より「JRI経営革新倶楽部」を設立・運営しております。詳しくは関連リンク欄をご参照ください。

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