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日本版SOX法対応と情報システムの整備の進め方について

2007年02月23日 成瀬忠


ここではコンサルティング担当者が日々のコンサルティング業務の中で気付いた事を掲載していきます。

第3回「日本版SOX法対応と情報システムの整備の進め方について」

 日本版SOX法への対応の一環として、財務報告に係る内部統制のうち、業務プロセスに係る内部統制を評価する際、情報システムの整備状況が十分でない場合には、評価作業の対応負荷が高くなることが懸念されます。
例えば、販売システムと会計システムといった複数のシステム間のデータ連携に未対応の場合、販売システムへの売上等の計上後に実施する会計システムへの仕訳入力における不正やミスを防止するためには、人的な対応が必要となります。人的な対応の一例としては、ある担当者が会計システムへの仕訳入力を行った後に、販売システム及び会計システムから出力した伝票、帳票等をもとに、別の担当者が不正やミスがないことを確認することが挙げられます。人的な対応で不正やミスといったリスクを統制する場合には、人手を介さずに情報システムを利用してリスクを統制する場合に比べ、統制の有効性を評価する際に多くのサンプルが必要となり、対応負荷が高くなります。
 裏を返せば、完成度の高い情報システムを利用して日々の業務を運用することによって、業務プロセスに係る内部統制の有効性を評価する際の負荷を軽減することができるといえます。そこで、情報システムの整備状況が十分でない場合には、日本版SOX法への対応に向けて内部統制の整備に着手する前に、情報システムの整備の進め方を検討しておき、計画的に有効性を評価する際の作業負荷を軽減していくことが有効と考えます。
日本版SOX法対応に早急に着手することが必要な企業における情報システムの整備の進め方としては、日本版SOX法対応と並行して実施する方法と、日本版SOX法対応後に実施する方法が考えられます。
内部統制の有効性評価作業の負荷を早期に軽減するためには、前者を選択し、内部統制の運用開始前までに情報システムを改修もしくは再構築することが有効です。これにより、日本版SOX法適用開始年度から、統制の有効性を評価する際のサンプル数を減らすことができます。しかし、前者を選択した場合には、日本版SOX法対応のために必要な作業と並行して情報システムの整備を行うことになるため、日本版SOX法対応期間中に作業負荷がかなり集中することが懸念されます。また、情報システムを改修・再構築した後の新業務を想定して、評価対象となる業務プロセスの文書化作業を進める場合には、情報システムの改修・再構築が遅延すると日本版SOX法への対応も遅延するというリスクがあります。
 これに対し、後者を選択した場合には、前者に比べて、日本版SOX法対応期間中の作業負荷や日本版SOX法への対応遅延リスクを低減することができます。しかし、情報システムの改修・再構築が完了するまでの間は、多くのサンプルを用いて内部統制の有効性評価を行う必要があります。また、内部統制の運用開始に向けては現行業務について文書化作業を進めておき、情報システムの改修・再構築後に新業務についても再度文書化作業を行う手間がかかるというデメリットもあります。
 以上のように、情報システムの整備の進め方について、日本版SOX法対応と並行して実施する方法と、日本版SOX法対応後に実施する方法には、それぞれメリット、デメリットがあるので、確保できる社内のマンパワー、情報システムの整備に必要な期間等を考慮し、どちらを選択するかを検討することが重要と考えます。

以 上




※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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