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コラム「研究員のココロ」

住宅供給業者はリピート需要を獲得できるか?
~消費者アンケート調査結果からの考察~

2007年06月04日 新角耕司


 前回、「新築住宅需要が縮小していく今後を見据え、リフォーム需要を獲得するために住宅供給業者は販売後の消費者との関係性を再構築すべきだ」という主旨の小論を掲載したが、そのための具体的方策を探るべく、消費者アンケート調査を実施した(注)。本稿ではその結果の一部をご紹介したい。

 アンケート調査は、リフォームに関心のある30歳~60歳の既婚女性703人に対して実施した。彼女たちは世帯主またはその配偶者で、全員が持家戸建住宅居住者である。
 彼女たちにリフォームに対する最大許容金額を聞いたところ、23.6%が「300万円以上」と回答した。また、現在居住している戸建住宅を購入した業者へのリフォーム発注意向を聞いたところ、37.8%が「意向あり」と回答した。なおここでは便宜上、前者を「大規模リフォーム実施意向者」、後者を「リピート発注意向者」と呼ぶことにする。
 大規模リフォーム実施意向者がリフォームに関心者全体の1/4程度しか存在しないことは、住宅供給業者がリフォーム事業で戦う上での根本的な困難を暗示している。有望顧客を見出す能力に加え、効率的なオペレーション能力が必要となろう。一方リピート発注意向比率については議論の余地があろう。しかし、ほとんどの場合支払い総額が軽く1000万円を超え、しかも人生に何度も購入機会のない住宅という商品である。その購入を決断させるだけの高い信頼をかつて提供したはずの、住宅供給業者のリピート意向率としては非常に低い、と見るべきではないだろうか。

 次に、リピート発注意向の特徴を二つの側面から確認する。まずリピート発注意向と築年数との関係を見ると、築5年未満では54.5%と半数以上がリピート意向を持っているが、この比率は築年数の経過とともに低下し、築15~20年では36.6%と全体平均を下回った。通常リフォーム需要はこの時期以降に高まることを考えると、いかにリピート意向の低下を抑制するかが、住宅供給業者にとっての重要な課題となる。
 また、現住宅購入業者との「親密度」を「親密」から「疎遠」までの5段階で聞いたところ、51.8%が「疎遠」と回答した一方、「親密」と回答したのはわずか7.1%、「やや親密」を含めても9.1%であった。この結果は、居住者にとって住宅供給業者の存在感が薄れている、すなわち他の業者が入り込みやすくなっている状況を示していると言えるだろう。

 実際、現住宅購入業者との「親密度」とリピート発注意向には強い関係があり、「疎遠」と回答した人のリピート発注意向がわずか12.9%であったのに対し、「親密」あるいは「やや親密」と回答した人のそれはなんと95.3%であった。居住者との「親密度」を高めることができれば、リピート発注意向を飛躍的に高めることが可能であることが示されたと言える。ただし、「やや疎遠」と回答した人でもリピート発注意向が47.7%と全体平均を上回ることから、居住者に少なくとも「疎遠」と感じさせない程度の関係性を維持することが、まずは必要と言えそうだ。

 紙幅の関係上、本稿でこれ以上の議論は割愛するが、住宅供給業者がリピート受注を獲得することが想像以上に困難である可能性を、少なくとも感じていただけたことと思う。そもそもさほど高くない上に、時間の経過とともにさらに低下していくリピート発注意向をいかに維持・向上するか、住宅供給業者に突きつけられた課題は大きい。


(注)本消費者アンケート調査は、関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科における筆者の課題研究論文「消費者セグメンテーションによる大規模戸建リフォーム需要獲得方策の検討」の一部として実施されたものである。
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