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Sohatsu Eyes

中国太陽光エネルギー利用のアンバランス

2007年12月04日 李建平



最近、中国が世界一の「太陽エネルギー大国」に成長したとのニュースを中国関連情報サイトでよく見かけます。太陽エネルギーの利用方法には、太陽熱温水器のように「太陽光熱利用」と、太陽電池のように、光のエネルギーを電気エネルギーに変換して利用する「太陽光発電利用」の二つの方法があります。中国の太陽光熱利用の面では、2006年の普及面積は9000万平米と世界の76%を占め、利用者の人数は1.5億人に達したと言われています。一方で、太陽光発電利用も、昨年中国の太陽電池メーカー、サンテックによる日本のMSKの買収にみられるように、一見すると凄まじい勢いで世界の太陽光発電市場に参入しているという印象ですが、中国の太陽エネルギー利用には無視できない二つのアンバランスを抱えています。

一つ目は太陽光熱利用と太陽光発電利用とのアンバランスです。太陽光熱利用は、都市部から農村まで広く普及してきました。一方、太陽光発電の方は、2020年の総容量の目標が180万Kwであるのに対し、2006年末までで、全国の太陽光発電総容量はわずか8万Kwに過ぎません。
二つ目は太陽光発電産業チェーンのアンバランスです。中国の太陽光発電産業は太陽電池セル.モジュールメーカが牽引してきましたが、太陽電池関連製品の9割が海外に輸出され、また原材料のシリコンも大きく海外に依存しています。いわゆる原料と市場の「両端不在」の脆いチェーンとなっています。

二つのアンバランスとも太陽光発電に要求される技術水準とコストの面に原因があると考えられます。そこで、太陽光発電の先進国の日本、ドイツのように、政府の補助金などの支援策が期待されたのですが、売電価格は「政府定価」の文言に留まり、具体的な施策はなかなか出てきませんでした。しかし、昨年から中国政府は技術の自主開発によるコスト削減を目指し、発電効率、インバーター技術といった太陽光発電コア技術の開発に力を入れています。また、今年に入ってからは、科学技術部の重点実証プロジェクトとして、幾つかのメガワット級の系統連系太陽光発電所が着工されました。

再生可能エネルギーが益々重要視される今、豊富な太陽光資源の利用は無限の可能性を秘めています。太陽エネルギーを有効に利用し、資源節約、環境にやさしい社会の建設に寄与するには、バランスの取れた産業構造が求められています。中国政府の次の一手から目が離せません。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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