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コラム「研究員のココロ」

顧客接点変革にキャリア開発の視点を

2005年05月23日 山本大介


1.顧客接点変革に関わってきて

 筆者はこの数年間、営業やマーケティングを中心とする、企業において顧客と接してコミュニケーションする部門あるいは機能(顧客接点と呼ぶ)の変革活動に関わってきた。その中で我々が直接お手伝いした企業も含めて多くの顧客接点で働く方々のお話を伺ってきたが、気になったのは「今の仕事を続けていても自分の将来像がみえてこない」といった、自身のキャリア開発に関する不安だった。我々は営業担当者が取引先と面談する際の手法や、顧客や市場に関する情報の分析・活用方法など、主に営業やマーケティング活動の中身を変えることに重点を置いて研究を行ってきた。その考え方で確かに実績を向上させることができたケースもみてきた。しかし顧客接点の変革に取り組んだものの十分な成果を上げられていないケースでは、顧客接点で働く人々のキャリア開発の問題も変革を阻害するひとつの原因になるのではないかと考えさせられた。新しい営業手法を導入しても、それを運用する担当者が自らのキャリアの先行きに不透明感を抱えたままでは「今の仕事のやり方を変えたところで自分の将来に意味が無いのでは」と変革の意欲が沸かず、新しい手法が全く定着しないという事態も起こっていることがわかったからだ。


2.顧客接点変革にもキャリア開発の視点は必要

 キャリア開発の問題は顧客接点部門ではなく、人事部門で取扱われるのが普通だろう。だが筆者は、顧客接点に携わる人のキャリアステップの整備は顧客接点の変革のひとつとして取り組まなければならないと考えている。
 顧客接点の変革では、新しい方法論が次々と提案される。顧客の絶え間ない変化に対応するための試行錯誤は避けられないことだ。しかし新しい方法論は、その担当者からすると非常な負担増になる。企画スタッフあるいはコンサルタントが張り付いてフォローしている間こそ何とか試してくれても、プロジェクトが終了してしまえばたちまち新しい方法論やツールは打ち捨てられてしまいがちだ。
 本来新しい方法論を組織に定着させるには、組織全体としてその方法論にマッチした構造はどうあるべきか、あるいは制度はどうあるべきか、運用にはどのような方法があるのか、これらの問題を併せて考えなければならないが、この際に組織で働く人のキャリア開発という視点を持ち込むことが必要ではないだろうか。例えば営業組織であれば、営業チームの構成、営業担当者あるいは管理者の評価方法、日々のマネジメント手法などを同時に組み立てていく中で、ひとりの社員が営業担当者としてキャリアをスタートしてからどのようにして成長し、自らのキャリアを選択していくのかというステップ、ストーリーを明示することだ。スペシャリストとして顧客と接する活動を極めていくのか、あるいはいずれは管理職として他の顧客接点担当者を指示・支援していく立場になっていくのか、自らのキャリアを見通すことができれば仕事に対する意欲も変わってくる。営業チームの人数や役割の構成、評価制度の中身を作り込んでいけば、残念ながら全ての人が希望する仕事に従事できないという状況も起こるだろう。その際の調整の指針がはっきりしていればトラブルも避けやすい。どうしても社内で調整し切れない場合には、社外に新たなキャリアを求めていくことも起こり得るだろう。
 顧客接点の変革活動とキャリア開発の問題はコンサルティングとしてもこれまで別々のテーマとして取扱われてきたため、我々もこれから研究を重ねていく必要がある。より包括的なアプローチとしての顧客接点変革、これを当面の重要研究テーマとして掘り下げていくつもりである。
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