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コラム「研究員のココロ」

地域情報化の推進における自治体の役割

2005年02月07日 香川裕一


 政府が2001年に打ち出したe-Japan戦略以降、行政が中心となって地域の情報化が進められてきた。特にネットワークインフラの整備や教育・医療分野など、様々な分野で先進的なアプリケーションの開発が実施されてきた。しかしながら、行政が中心となって進められてきた地域情報化の取り組みは、必ずしも住民ニーズからのアプローチとなっておらず、システムを開発して導入後、ほとんど使われていないなど、税金の無駄遣いと言われるような活動も少なからず存在していた。
 そのような中、地域発の活動が台頭してきた。すなわち、行政が中心となって地域情報化を推進するのではなく、NPOや地域企業などが自分たちの生活環境の向上、地域のアイデンティティの確立などを目的として独自に地域情報化を推進する活動である。NPO法人である南房総IT推進協議会では地域のネットワークの根幹となる地域ネットワークオペレーションセンターを運営して、地域のインフラ整備を行っている。また、同じNPO法人の桐生地域情報ネットワークでは、市民の立場から地域情報化のあり方について行政に提言して、その提言に基づいてインターネットカフェを運営したり、独自に地域の伝統文化を後世に継承するためにデジタルコンテンツの蓄積を推進している。

 このような地域発の情報化に関する活動が台頭する中で、行政は何をすればいいのか。地域情報化を推進するために必要な資源としては、「人」、「モノ」、「金」の3つがあると考えられる。
 まず、「金」について、行政の財政状況はますます厳しくなっている中、行政の情報化に対応することが精一杯で地域情報化の活動を支援することは難しいのが実情である。
 次に、「モノ」については、行政が保有する資産を地域に開放していくことが必要である。例えば、情報スーパーハイウェイなどの高速ネットワークを地域に開放することで、条件不利地域においもて高速インターネット環境が実現できる。また、庁内業務のために導入したGISシステムを地域に開放することで、NPOなどが地図情報と連携した情報発信を行うことが可能になる。このように、自治体が保有する資産で地域のニーズにマッチするものがあれば、積極的に開放していくことが求められる。
 次に「人」について、自治体職員が地域情報化推進の調整役を担うことが求められる。地域情報化は、単独の組織だけで推進するのではなく、地域に関連する様々なプレイヤーが連携して推進することが必要である。そのためには、誰かが地域の人や組織をつなぐ調整役を誰かが担うことが必要である。市民との協働で先進的な札幌市や三鷹市などは、自治体職員がNPOや地域企業などと地域情報化に関する企画会議を行うなど、積極的に地域に出て行って、調整役を担っていることがある。地域情報化を推進するNPOや地域企業にとって、行政が活動に参加していることで活動に対する地域の信頼が増したり、自治体が保有する豊富な情報(例えば、地域内外の先進的な取り組み、国等の補助施策の情報等)を入手できることはメリットが大きい。このように、自治体が地域に“人”を送り込んで、NPOや地域企業と共に地域情報化について考え、プロジェクトの推進を支援していくことが求められる。

 このような行政の役割が変わっていることを、まずは自治体職員が認識して、地域のNPOや企業と協働するためのコミュニケーション能力やマネジメント能力を向上させることが必要であろう。
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