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リサーチ・フォーカス No.2019-014

正念場を迎えた文政権の所得主導成長―最低賃金引き上げを軌道修正し、バラマキ的な財政支出拡大へ―

2019年08月14日 成瀬道紀


2017 年5月に発足した韓国の文在寅政権は、「所得主導成長」を最優先の経済政策としている。なかでも、看板公約は2020 年までに最低賃金を時給1万ウォンに引き上げることであった。実際、2018 年、2019 年は2年連続で最低賃金を前年比2桁の上昇率で引き上げた。しかし、2020 年は一転して+2.9%の引き上げにとどめる結果、最低賃金は8,590 ウォンと大幅な公約未達に終わる見込みとなった。

文政権が所得主導成長を掲げた背景には、これまで韓国経済を牽引してきた輸出主導成長が行き詰まりつつあることが指摘できる。2010 年代入り後、韓国の輸出は大きく鈍化し、景気牽引力を失った。さらに、長年政府が輸出の担い手である財閥優遇するなかで拡大した所得格差に、国民の不満が鬱積していた。こうしたなか、最低賃金引き上げや財政支出拡大で低所得層を中心に家計の所得を増やし、所得・支出・生産の好循環を生み出すことを目指す文氏の主張は有権者の支持を得た。

もっとも、財政支出拡大の財源を法人税率の引き上げで賄ったため、最低賃金の引き上げと併せ、家計へ分配する原資のほとんどを企業が負担する構図となった。この結果、製造業の韓国離れが進行したうえ、小売業や飲食業の雇用が減少し、失業率が上昇するという大きな副作用が顕在化した。

このため、文政権は、最低賃金の引き上げの軌道修正を余儀無くされた。もっとも、その政策理念ともいえる所得主導成長を撤回したわけではない。今後は、政府の負担による「バラマキ」的な財政支出拡大で、所得増加を追求していく構えである。ただでさえ急速な高齢化で財政支出の増大圧力が強まるなか、負担についての議論を避けたまま各種給付を拡大させていけば、財政赤字が加速度的に拡大していくことが懸念される。文政権の所得主導成長は、正念場を迎えているといえよう。

正念場を迎えた文政権の所得主導成長―最低賃金引き上げを軌道修正し、バラマキ的な財政支出拡大へ―(PDF:522KB)
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