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JRIレビュー Vol.8,No.69

世界経済見通し

2019年07月30日 枩村秀樹


足許の世界経済は減速傾向にある。シリコンサイクルの調整局面入り、中国のデレバレッジ政策、米中貿易摩擦など、複数のマイナス要因が重なったことが原因である。

先行きを展望すると、引き続き弱い動きが続くものの、ファンダメンタルズは大きく崩れない見通しである。良好な所得環境を背景に個人消費が堅調を維持するほか、世界的な低金利環境も継続する。シリコンサイクルの調整にも目処がつくとみられる。

先行きの世界経済において、米中貿易摩擦が最大の下振れリスクながら、2020年のアメリカ大統領選挙が近づくにつれ、トランプ政権は徐々に通商政策を軟化させると予想される。これ以上の追加関税は国民負担が大きいうえ、マイナス影響を吸収するほどの高成長が期待できなくなるからである。

中国経済は引き続き下押し圧力が根強いものの、政策総動員によって緩やかな減速ペースにコントロールできると見込まれる。ただし、公的セクターへの景気依存度が高まるほか、中長期的には過剰債務問題を一段と深刻化させる恐れがある。

以上を踏まえると、2019年の世界景気は減速するものの、後退局面入りは避けられる見通しである。下押し圧力が薄れる2020年には緩やかな持ち直しに向かうだろう。もっとも、トランプ政権の対外強硬姿勢がさらに先鋭化するなど、先行き不透明感がさらに強まった場合、以下のようなリスクシナリオに陥り、低成長が長引く可能性もある。

第1に、内外経済環境の不確実性に直面して、企業が設備投資マインドを慎重化させる恐れがある。これは、需要面から世界景気を下振れさせるだけでなく、供給面からも潜在成長率を押し下げる。資金需要が減少すれば、金融緩和の効果もその分減殺される。

第2に、地政学リスクの台頭である。米国の政策に翻弄される中近東・中南米の経済が一段と不安定化すれば、世界景気を大きく下押しするだけでなく、原油価格の急騰リスクも高まることになろう。
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