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JRIレビュー Vol.8,No.69

日本経済見通し

2019年07月30日 村瀬拓人


足許のわが国経済は、輸出の下振れに起因した製造業の弱さを背景に、停滞感の強い状況にある。もっとも、国内需要に牽引され非製造業の生産活動は拡大が続いており、景気後退には至っていない。

輸出は、政府の景気対策を受けた中国の民間投資の下げ止まりや、世界的なIT需要の底入れを背景に、緩やかに持ち直す見込みである。ただし、米中の貿易摩擦の激化が、輸出を下押しするリスクには注意が必要である。

海外経済の不透明感が強まるなかでも、企業は積極的な設備投資姿勢を維持している。とりわけ、海外経済の動向に左右されにくい非製造業の投資が活発化していることは、先行きの景気にプラス材料である。人手不足の深刻化と働き方改革を背景に、省力化・合理化投資を積み増す動きがみられる。製造業でも、老朽化した設備の更新ニーズから工場の建て替えが活発化している。潜在的な投資需要は強いことから、製造業の投資マインドが大きく下振れる可能性は小さい。

個人消費も、10月に予定されている消費増税を乗り越え、緩やかな増加基調が続く見通しである。今回の増税は、税率の引き上げ幅が2%と小さいほか、軽減税率の導入や教育無償化も、物価上昇による家計負担の増加を緩和する。さらに、家計の所得環境も2014年増税時に比べ改善している。消費増税が実施されても実質所得はプラスの伸びを維持できるため、前回増税時のような深刻な消費低迷は避けられる見通しである。ただし、教育無償化の恩恵を受けない単身世帯や年金世帯は、増税時の負担増が大きいため、消費が下振れる懸念もある。

以上を踏まえると、外需の先行きには不透明感が残るものの、内需の拡大に支えられ、景気は再び緩やかな回復軌道に復帰する見込みである。2019年度および2020年度の成長率は、1%程度とみられる潜在成長率に近い緩やかな成長が続く見通しである。人手不足が深刻化するなか、成長につながる投資や従業員への分配に前向きな企業も少しずつ増加している。企業の経営姿勢の変化が、内需の強さにつながっており、海外経済がある程度下振れたとしても、景気回復が途切れにくい経済構造になってきたといえる。

ただし、米中対立や中東情勢の緊迫化、中国の債務バブル崩壊など、複数の景気下振れ要因が同時に顕在化した場合、景気後退に陥る可能性は否定できない。その場合は、追加金融緩和や消費増税の再延期ではなく、内需の強化につながる財政支出で対応する必要がある。
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