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【ヘルスケア】
高齢者の生活ニーズ充実のカギは孫世代の巻き込み

2019年07月09日 辻本まりえ


 日本総合研究所では、平成30年度厚生労働省老人保健健康増進等事業(※)として、ケアマネジャー、要介護高齢者の家族(子世代、孫世代)に対して、保険外サービスの捉え方に関する調査を行いました。今回はその結果から、「世代による保険外サービスの捉え方の違い」をお伝えしたいと思います。
※「地域包括ケアシステムの構築に向けた公的介護保険外サービスの活用に関する調査研究事業」

 この調査では、ケアマネジャーと要介護高齢者の家族に対して、回答者が関わる要介護高齢者1名を思い浮かべてもらった上で、各設問に回答してもらいました。具体的には、要介護高齢者本人向けの支援内容(42項目)、要介護高齢者の家族向けの支援内容(14項目)を提示し、高齢者本人ならびに家族にとって(ア)その支援が必要かどうか、(イ)その支援を利用してもらいたい(したい)と思うかどうかを尋ねました。
 この調査のポイントは、要介護高齢者の家族を要介護高齢者の「子」世代と「孫」世代に分けて、結果の分析を行っている点です。

 要介護高齢者の子世代と孫世代の回答結果を比較すると、総じて孫世代の方が子世代よりも、保険外サービスに対する利用意向が大きい傾向が見られました。例えば、「(掃除や洗濯などの家事によって)不快がない状態・環境を作ることができる」というニーズの実現のために保険外サービスを利用したいかどうかを尋ねると、「とてもそう思う」と回答した割合は、子世代は32.2%であるのに対して、孫世代は44.1%と子世代を上回ります。また、「日常的な金銭管理ができる」というニーズの実現についても、「とてもそう思う」と回答した割合は、子世代が23.7%、孫世代が32.4%と、保険外サービスを利用することによってそれらのニーズを実現した方が良いと回答した割合は孫世代の方が高い傾向にあります。
 一方で、子世代と孫世代の要介護高齢者との関わり方を比べると、日常的に要介護高齢者と関わっている人の割合は、子世代は43.6%、孫世代は24.5%と、子世代の方が日常的な関わりが多い傾向にあります。
 これらの結果から、孫世代の方が子世代に比べて保険外サービスの利用意向が強いのは、介護への関わりが子世代よりも小さいからだということも言えます。一方で、客観的に状況を見ることができるため、高齢者の生活にとって必要なサービスや支援を判断できるとも考えられます。

 実際に高齢者と話をしてみると、「庭の手入れをしたい」「ペットフードの大袋が持ち上げられない」や「衣替えをしたい」「今の配置が不便なので家具を移動したい」などといった、介護保険ではカバーされないが日常の生活を快適あるいは豊かにするための支援を必要としている声が聞こえてきます。あるいは、孫の結婚式や同窓会への参加など、人生の節目のイベントに参加するにあたって手助けがほしいという声もよく耳にします。
 こうした多様な高齢者のニーズを実現していくためには、日常的に高齢者に関わっている家族だけではなく、日常的には関わっていない孫世代への情報提供も必要となるでしょう。特に、ITツールなどに慣れ親しんでいる若い世代も巻き込んでいくことで、ビデオ通話による遠隔参加での結婚式参列や、季節に応じてアプリを用いて預けている自分の洋服を取り出す衣替えサービスなどのように、既存のサービスを高齢者のニーズ実現に役立てていくことができるのではないでしょうか。

この連載のバックナンバーはこちらよりご覧いただけます。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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