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万博に向けてSDGsの達成貢献をどう発信するか

2019年07月09日 渡辺珠子


 2025年に大阪で国際博覧会(万博)が開催される。この大阪・関西万博は、Society5.0を鍵とした持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献を柱にすえたことが国際的に高く評価され、誘致につながったという。この事実は、2025年に向けて、SDGs達成に向けた取り組みを強力に推進することはもちろん、どれだけ貢献しているのかを世界に向けて発信していくことが、日本企業や政府に求められることを意味する。

 さて、大阪・関西万博のテーマが「いのち輝く未来社会のデザイン」であることはよく知られているが、3つのフォーカスエリアと各エリアでの注力すべき取り組みが更に構想されていることはご存じだろうか。1つ目は「Saving Lives (救う)」で、感染症対策や健康寿命の延伸に向けた取り組み、2つ目は「Empowering Lives(力を与える)」で、AIやロボットを活用した教育や仕事の効率化・高度化に向けた取り組み、そして3つ目が「Connecting Lives(つなぐ)」で、異文化理解の促進やコミュニティ形成・強化、イノベーション創出に向けた取り組みである。やや辛口とはなるが、これら注力すべき取り組みに目新しいものは一つもない。ただ、目新しさはないものの、これらは日本がこれから「稼ぐ力」を維持するために必要な社会・経済インフラを形成する要素であり、足下で特に注力すべき内容であることは間違いないだろう。企業がSDGs達成に向けた新たな取り組みを行う場合は、まずはこれら3つのフォーカスエリアで自社ができることを考えてみるのも一案である。

 では、これら3つのフォーカスエリアに紐づくSDGsの目標達成にどれくらい貢献したのかをどう開示していくべきか。二酸化炭素排出量や節電量、再生エネルギー利用率や節水量など環境関連の取り組みについては数値化しやすく、取り組んだ結果を示しやすい。反対に、仕事の高度化や異文化理解の促進、イノベーション創出などは、どのように評価すれば「SDGsに達成貢献していることが分かる」のか。SDGsにはターゲット別に評価指標(KPI)が設けられているが、企業や自治体単位で容易に活用できるものばかりだとは言えない。国や地域の事情を踏まえたKPIを設定する方が良い場合もある。しかし、これもよくよく議論が必要である。

 例えば、異文化理解のために、海外の方を招いて文化交流事業を行い、その参加者数と参加者アンケートで達成貢献度を示すことができるだろうか。そもそも異文化理解はイベント単発で成し遂げられるものではないので、参加者数だけで貢献度を示すのはいかがなものか、という意見も当然あるだろう。イノベーション創出に至っては、何がイノベーションなのかと言う認識が統一されていない中で、達成度を示そうとするのは至難の業である。SDGsは法制度ではないので強制力があるわけではない。従って達成貢献度の評価は各企業や自治体の意思に委ねられる。しかし、万博開催年に、日本全体として、もしくは各自治体、各業界として達成貢献を明示しようとするならば、共通の評価指標や評価方法を確立しておくことは急務であろう。

 2019年6月25日、国連貿易開発会議(UNCTAD)は、年次貿易開発理事会においてSDGsの7つの目標についてのレビュー結果である「SDG Pulse」を報告した。ここで注目したいのは、「国連は定量的に進捗状況を評価することを重視する」としたことである。国全体として取り組みを発表する上で、数値化する意義は大きい。3つのフォーカスエリアにおけるSDGs達成貢献を数値化することまで、踏み込んだ議論が展開されるのか。今後も注目していきたい。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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