コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

JRIレビュー Vol.9,No.70

【特集 実装段階に入った社会・経済のデジタル変革】
デジタルトランスフォーメーションの新段階と求められる環境整備-コネクテッド・インダストリーズ政策を中心に

2019年08月08日 藤田哲雄


世界主要国でデジタルトランスフォーメーションを推進する政策が出揃うなか、政府は2017年に産業に焦点を当てた「コネクテッド・インダストリーズ」を打ち出した。そこでは、第4次産業革命が日本のSociety5.0で目指す超スマート社会へのドライバーとして位置付けられており、それを産業に投影したものとなっている。

第4次産業革命はパラダイム転換というべき様々な現象をもたらしつつあるが、産業界における最近のトレンドとして重要なものは、①モノからサービスへの流れ、②サーキュラーエコノミーの広がり、③バリューチェーンからビジネスエコシステムへの発展、である。

コネクテッド・インダストリーズ政策は、当初の政府案をもとに実業界との対話が重ねられ、2017年10月に東京イニシアティブとして、五つの重点的分野の取り組みと、三つの横断的な政策にまとめられた。また、同時並行的に企業レベルでのデジタルトランスフォーメーションを推進する研究会で議論が重ねられ、2018年9月に様々な課題とその解決の方向性を議論したデジタルトランスフォーメーション(DX)レポート、および12月にはDXガイドラインが公表された。

データ利活用の環境整備に関しては、短期間のうちに数多くの政策を実現し、企業のデータ利活用環境は大きく改善した。もっとも、わが国の場合、ドイツのシーメンスやSAPのような事実上のデータのプラットフォームが存在していないため、これらを統合していく作業には一定の時間を要すると思われる。

コネクテッド・インダストリーズ政策では税制により企業間連携の促進を図っているが、データ連携による価値創造は不確実性を伴うものであり、成功を条件とすることは投資のインセンティブとはなりにくい。むしろ、実験的な取り組みを後押しする施策が必要である。また、2社間連携よりもプラットフォーム形成を支援する必要があろう。

企業のデジタルトランスフォーメーションへの取り組みは、まだ一部の企業で行われているにすぎず、多くの企業が様子見の姿勢である。しかし、AIの導入などでは仮説と実験を繰り返すことが必要であり、企業の意思決定においては、システム導入のコストではなく、戦略的な投資であると考え方を変える必要がある。

企業のデジタルトランスフォーメーションを実現するうえで最大の課題は、人材の問題である。IT人材の絶対数が不足しているが、政府は大学教育を大きく変更してこれに対応する姿勢を見せている。また、最近のアジャイル型開発に対応するためには、IT人材の業務知識の深化に加えて、ユーザー企業側のIT知識の拡充が必要である。
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ