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CSRを巡る動き:G20大阪サミットと海洋プラスチック対策

2019年06月03日 ESGリサーチセンター


 2019年6月28日、29日にG20(金融世界経済に関する首脳会議)が大阪で開催されます。昨年12月21日に開催された第6回持続可能な開発目標(SDGs)推進本部にて、安倍首相は、G20 の機会を捉え、SDGsの達成に向けて「国際社会をリードする日本」を世界に向けて発信していくと述べました。また、2019年9月の国連総会の際に開催されるSDGs首脳会合の場で、G20議長として日本政府は取組成果を国際社会に向けて発信する予定です(i) 。

 G20で議論される議題の一つが海洋プラスチック問題です。2016年のダボス会議で提示されたレポートによると、年間約800万トンのプラスチックごみが海に流出しており、その量は年々増加すると予想されています(ii) 。今年のダボス会議では、安倍首相がG20大阪サミットで、海洋プラスチック問題を重要な議題として取り上げ、新たなプラスチックごみによる海洋汚染をなくすために世界全体の取組を大きく進めることを目指すことを表明しました(iii) 。G20に向けて、日本が海洋プラスチック対策をリードする姿勢を明確にするべく、各省庁が様々な動きを見せています。2月には環境大臣を議長とした「海洋プラスチックごみ対策の推進に関する関係府省会議」が設置され、G20大阪サミットまでに「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン(仮称)」を策定する予定です。アクションプランの具体的な内容については、以下の8つの柱で各省庁から提案がなされることになっています(iv) 。

「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン(仮称)」における取組柱立て
・ プラスチックごみの回収・適正処理の徹底
・ ポイ捨て・不法投棄・非意図的な海洋流出の防止
・ ポイ捨て・不法投棄されたプラスチックごみの回収
・ 海洋に流出したプラスチックごみの回収
・ イノベーションによる代替素材への転換
・ 取組を促進するための関係者の連携協働
・ 途上国等における対策促進のための国際貢献
・ 実態把握・科学的知見の充実

 すでに環境省では海岸漂着物処理推進法を改正し、マイクロプラスチック類の適切な処理や排出の抑制や、リサイクルの推進による海洋漂着物の抑制などを追加しています。また第4次循環型社会形成推進基本計画(2018年6月閣議決定)の下にプラスチック資源循環戦略を策定し、これに基づいた様々な施策を推進すると発表しています。その他には、内閣府がバイオエコノミー創出に向けた戦略の下、海洋分解性バイオプラスチックなどのバイオ技術を活用した革新的新素材の開発や、市場の拡大に向けた検討や取組を進める方針を打ち出しています。経済産業省も「海洋生分解性プラスチック開発・導入普及ロードマップ」を発表し、革新的なプラスチック対策を力強く推進していく姿勢を見せています。

 プラスチック廃棄物対策を進めている企業はすでに多数あり、経団連の「SDGsに資するプラスチック関連取組事例集」でも様々な取組が紹介されています。日本は、G20大阪サミット議長国として、さらに「大胆な変革」をリードしたいという考えでしょう。一部の省庁では、上記の柱に関連した施策や補助金制度などを活用し、産業界や学術・研究機関の動きを後押しする動きも出ています。今後、複数企業が連携した大型プロジェクト立上げや、ベンチャー企業が有する先端的な技術の拡充などに、政府や企業の資金投入が加速することが予想されます。G20が契機となり、国際社会に貢献する日本発の事業が生まれることに期待したいところです。

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(i) 首相官邸ウェブサイト 持続可能な開発目標(SDGs)推進本部 (平成30年12月21日)参照
(ii) World Economic Forum “The New Plastics Economy Rethinking the future of plastics” January 2016
(iii) 経済産業省「海洋生分解性プラスチック開発・導入普及ロードマップ」
(iv) 海洋プラスチックごみ対策の推進に関する関係府省会議 配布資料4「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン(仮称)について」
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