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働き方改革と生産性向上

2019年04月23日 井熊均


 日本総研でも働き方改革で、かつて長時間労働の代名詞のように思われていた研究員、コンサルタントの退社時間がかなり早くなりました。多くの会社で働き方改革の成果が上がり始めていると思います。一方で、働き方改革は日本の競争力を落とすのではないか、と言われる方が少なくありません。確かに、自分の経歴を振り返っても、時間を忘れ、強いプレッシャーの下で仕事をしたことがビジネスマンとしての能力アップに繋がったことは間違いありません。その意味で、こうした方々の言われることに同意できる面があるのは否定できないのですが、上手くやれば働き方改革は生産性向上につながる可能性もあるとも思うのです。

 四半世紀にわたり大学のボートクラブのコーチをやりました。あらゆるスポーツの中で体力的に最もキツイと言われるボートでは、昔は理論的ではない根性論の長時間練習が横行していました。しかし、1990年前後から海外の科学的なトレーニング理論が導入されると、不必要に長い練習は影を潜め、タイムは大幅に向上するようになりました。レースで勝つために必要な要素を見定め、それが鍛えられるように日々の練習の目的を明確にした結果です。我々のチームも新しいトレーニング方法の成果で全日本を冠するレースで優勝することができました。プロのスポーツを見ても一流の選手は、練習メニューに拘りを持ち厳しい練習はするものの、疲れが翌日以降の試合に影響するような練習はしません。

 これからAIの導入などで、誰もがアウトプットの量ではなく付加価値が問われるようになります。来るべき時代に対処するために、獲得すべき能力と強化の仕方を明確にし、それを業務に反映する、という考え方を具体化することが希求の課題となっています。長時間残業の時代には無かった論理的なアプローチです。その意味で、高いレベルのスポーツが辿った歴史に、働き方改革を競争力の向上につなげるヒントがあると思うのです。


※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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