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アジア・マンスリー 2019年5月号

中国の景気減速に歯止め

2019年04月23日 関辰一


中国の景気減速に歯止めがかかった。昨年後半に政府が景気重視の政策スタンスに転じ、デレバレッジ政策を調整したためである。景気対策の効果発現によって、4~6月期に成長率は持ち直す見込みである。

■インフラ投資が景気を押し上げ
中国では、2019年1~3月期の実質GDP成長率が前年同期比+6.4%と、前の期から横ばいとなった。昨年来の景気減速に歯止めがかかった格好である。以下では、景気押し下げ要因と押し上げ要因を整理したうえで、今後の中国経済を展望する。

景気の押し下げ要因として、米国の輸入関税引き上げ、世界経済の停滞感の強まり、製造業の過剰投資の反動の3つが指摘できる。

まず、米国のトランプ政権は、知的財産権への侵害を理由に、昨年7月に第1弾(340億ドル)、8月に第2弾(160億ドル規模)、9月に第3弾(2,000億ドル規模)の中国製品に対する制裁関税を発動した。この結果、中国の米国向け輸出は大幅に減少した。

加えて、米国向け以外の輸出も増勢が鈍っている。新興国や欧州連合(EU)などで、製造業の生産活動の停滞感が強まっているからである。

このほか、設備投資のスローダウンも景気の重しとなっている。過去数年間に大規模な情報化、製造工程自動化のための設備投資が行われた反動で、ハイテク分野を含む製造業の設備過剰感が強まっている。タイミング悪く、政府によるデレバレッジ(与信や債務の抑制)政策や米中貿易摩擦の激化が重なり、投資採算の悪化を懸念した企業が投資に慎重になった。

他方、景気押し上げ要因としては、政府が景気重視の政策スタンスに転じたことが大きい。2017年末から、政府は構造調整のために、デレバレッジ政策を本格化した。銀行に対しては、簿外取引(いわゆるシャドーバンキング)の縮小を指導するなど金融規制・監督を強化した。これにより、シャドーバンキングが縮小に転じた一方、地方政府などが資金繰り難に直面し、インフラ投資が大幅に鈍化した。

もっとも、2018年後半になると、予想以上の投資の冷え込みに危機感を抱いた政府は、優先課題と位置づけてきた構造調整を棚上げして、デレバレッジ政策を見直した。

金融面では、短期金利の低め誘導など金融緩和に踏み切ったほか、銀行に対しては簿外取引の縮小の期限を延長するなど、金融規制・監督を緩和する方向へ修正した。財政面でも、需要創造に向けてインフラ整備を加速するとともに、地方政府にもインフラ投資の拡大を求めた。

これにより、シャドーバンキングの縮小に歯止めがかかり、再び拡大に転じる兆しがみられるようになった。地方のインフラ整備を担う地方融資平台向けの銀行融資拡大もあいまって、インフラ投資は底入れした。とりわけ、鉄道の持ち直しが著しい。

■4~6月期に景気持ち直し
今後を展望すると、4~6月期の成長率はやや持ち直す見通しである。本年入り以降も、さまざまな具体策が打ち出されているからである。融資拡大、企業向け減税と社会保障負担軽減(計2兆元)、地方債発行の前倒し、個人向け減税、自動車や家電に対する補助金などである。こうした施策の景気下支え効果が徐々に顕在化するとみられる。

実際、景気の先行指標である製造業新規受注PMI(国内+輸出向け)が、2カ月連続で良し悪しの目安となる「50」超を回復した(右下図)。外需の不振が続いていることを踏まえると、内需が急回復しつつあることを示唆している。株価も昨年末から3割程度持ち直した。自動車販売についても、高所得者に人気の排気量2,500cc超の大型車は、株価持ち直しや減税措置を受けて回復している。

需要項目別にみると、引き続き輸出は景気押し下げ要因となるものの、投資と消費が景気を押し上げる構図となるだろう。とりわけ政府の景気対策は、インフラ投資や不動産開発投資、製造業の生産拡大に大きな効果を発揮すると予想される。2019年通年の成長率は+6.4%と、政府目標(6.0%~6.5%)のレンジ内に着地できると予想される。

ただし、一連の景気対策は、構造改革を棚上げにして実施されたものである。その副作用として、地方財政を悪化させたり、過剰設備と過剰債務の問題を深刻化させたりする恐れがある。中国政府は、景気の失速回避が確認できた時点、おそらく年内には景気重視から構造調整重視に再度軸足を移して、投資やシャドーバンキングの抑制に舵を切る公算が大きい。したがって、リーマンショック後のような持続性をもった景気のV字回復は期待できず、来年には再び減速基調に戻るだろう。
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