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超成熟社会をハッピーに生きるには?
~個人が備えるべきこと/社会が支えるべきこと~

2019年03月18日 小林幹基


 2017年度、筆者らは株式会社オージス総研の皆様と「超成熟社会をハッピーに生きるには? ~個人が備えるべきこと/社会が支えるべきこと~」というテーマで未来像を描くワークショップを実施した。本コラムでは、ワークショップのステップおよびアウトプットの一部を紹介したい。

■はじめに
 近年、「人生100年時代」という言葉を耳にする機会が増えているのではないだろうか。2016年に発行された「LIFE SHIFT」(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著)以降、急速に知名度を上げているフレーズである。2017年9月には、政府も“人生100年時代を見据えた経済社会システムを創り上げるための政策のグランドデザインを検討する”会議として「人生100年時代構想会議」を設置している。民間企業でも、例えば株式会社博報堂が「100年ライフデザイン」と題したプロジェクトを推進するなど、「人生100年時代」をテーマにした取り組みが活発化している。そんな中、筆者らも、行動観察の先駆者である株式会社オージス総研様(*1)にお声がけいただいたのを機に、「人生100年時代」の未来像を描くべく、共同でワークショップを実施することとなった。
 ワークショップを実施するにあたり、「人生100年時代」の中でも特に「個人が“実は選びたかった”生き方を選択しやすい社会の仕組み」を見いだしたいとの思いから、テーマを「超成熟社会をハッピーに生きるには? ~個人が備えるべきこと/社会が支えるべきこと~」に設定した。

■ワークシップのステップおよびアウトプット例
 「未来を洞察し、デザインする/未来の展望を導き出す」ことを強みとする日本総研未来デザイン・ラボ/オージス総研の特徴を活かし、未来洞察ワークショップ(*2)をベースとして下記のステップで検討を進めた。
 ※レイアウトの都合もあり、詳細は割愛する

①「既存のロールモデルではない、新しい生き方を実践している方」4名抽出して、行動観察を実施。その後、ワークショップでインサイトを抽出


図1:インサイト抽出ワークショップの様子


②インサイトを基に「超成熟社会のハッピーな生き方」の未来イシューを6つ作成(下記参照)
 (ア)社会との向き合い方/世界観が『わりきり・あきらめ』から『義憤を感じ、社会を今より少しよくできる可能性を信じて、働きかけ続ける』になる
 (イ)働く目的が『会社の中で評価される/経済的な成功(利己的)』から『自分の周囲に小さなインパクトを与える/人の可能性を引き出す(利他的)』になる
 (ウ)社会人の学びが『スキル・ポジション獲得』から、『自分リフレイミング』になる
 (エ)時間の使い方が『会社中心(捧げる時間+リカバリーの時間)』から『探索・内省時間を重要視する』になる
 (オ)人間関係が『帰属集団でのつながり(家族、学校、会社)』から、『「自己の表明」により共感・共鳴してくれる人とのつながり(知り合い、サポーター)』になる
 (カ)お金の使い方が『将来の不安・リスクを想定して、とにかく貯める』から『やりたいことへのチャレンジとして、小さな投資を続ける』になる

③スキャニングワークショップで想定外社会変化仮説を3つ作成(下記参照)
 I.ステージママのいない自立した少年・少女の世界
 II.街のルール・インフラが個人起点で発案・形成・増殖していく社会
 III.モノファミリー~僕とおかんと時々アイボ~

④未来イシュー×想定外社会変化仮説による強制発想と「超成熟社会をハッピーに生きる」ための機会領域の抽出(下記参照)
一つのアウトプット例として、未来イシュー(ア),(ウ),(カ)と想定外社会変化仮説I. から「社会の担い手が『大人』から『子供』へ」という機会領域を見いだした。これは、下記のような世界をイメージしたものである。
 •デジタルネイティブな中高生は、ITリテラシーを駆使して大量の知識・情報を取捨選択し、取りこみ、活かすことができるようになる。その「情報取得・活用サイクル」は、大人よりも極めて迅速であるが故に、大人たちとは異なる経済圏(二層型経済)を構築し、起業やNPO的活動を次々と推進していく。
 •親は子どもの活動を抑制するのではなく、「自立した存在」として自身の束縛から解放し、愛着を持って見守る立場をとる。
  -子どもの成果を親が引き継ぐ、といったケースも出てくる。
 •このような社会が成立するためには、「誰でも安心して価値が出せること」「自分で考え、自分で決めることができる」という状態になる必要があり、そのためには「自己肯定感・効力感」が重要であり、「親の子離れ」および「親・先生・大人がティーチャーからファシリテーターになる」ことが求められる。


図2:強制発想の様子


※④の後に、行動観察をさらに深めた方法によるワークショップでInsight/Foresightの抽出も実施したが、その内容について本稿では割愛する

■ワークショップからの示唆
 これまでの検討において、例えば上記の例のように、超成熟社会をハッピーに生きるためには「親の意識や役割が変わる」ことが求められるといった新たな視点を得ることができた。一方で、上記のような社会に対して筆者らがどのようなアクションを起こしていくべきかを検討することは今後の課題である。
 検討のプロセスに目をやると、通常は未来イシューの策定に際して内部・外部環境調査や技術の棚卸しなどを行うのだが、行動観察を先行することで下記のメリットが得られたと筆者らは実感している。
 •未来イシューを実感のあるシーンとして描くことができる(未来イシューの精緻化につながる)
 •自他に対して未来イシューの説得力が増す
 •スキャニングに際しても行動観察で得た経験とそのストックが有効に働き、「人のうれしさ」を考えやすくなる

 なお、本コラムではワークショップの一端しか記載できていない。プロセスやアウトプットの詳細に興味がある方は、気軽に連絡をしていただきたい。

*1:オージス総研様についてはこちらを参照ください
*2:未来洞察ワークショップの概要については、「サービスおよびネットワーク」「アプリケーションと事例紹介」を参照ください。
以上



※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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