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アジア・マンスリー 2019年3月号

早晩終息が見込まれる中国の自動車販売不振

2019年02月18日 関辰一


2018年の中国自動車販売の落ち込みは、早晩終息すると見込まれる。政府による自動車需要刺激策、米中対立の緩和、所得の上昇を受けて、再び自動車販売は増加トレンドに戻っていくとみられる。

■28年ぶりの前年割れ
2018年は、中国自動車市場にとって厳しい1年となった。中国汽車工業協会によると、自動車販売台数は前年比▲2.8%の2,808万台となった。前年割れとなったのは、28年ぶりである。

2018年初には、小型車減税措置の完全終了によって、販売台数が落ち込んだ。排気量1,600cc以下の小型車の取得税率は通常10%であるが、政府は景気てこ入れのために、2015年10月から2016年末まで税率を5.0%、2017年中は7.5%と低めに設定し、自動車需要を刺激した。その結果、この2年間の販売動向は2011年以降のトレンドから上振れたものの、減税措置が完全終了した2018年には逆にトレンドから下振れる動きが現れた。とくに、地場ブランドは減税措置による恩恵が大きかった分、反動減も大きかった。

さらに年後半には、株安や米国車の買い控えによるマイナス影響も加わり、販売動向は急速に悪化した。上海総合株価指数は、中国政府による金融規制・監督の強化、米中貿易摩擦の激化、不動産価格抑制策などを受けて、2018年1月24日の3559ポイントをピークに下落し、年末には2494ポイントまで低下した。この間の30%に及ぶ株価の下落は、逆資産効果となって家計の購買力を圧迫した。米国車の買い控えによる影響も大きい。2012年に日中関係が悪化した際に、日本車の販売台数が一時的に半減したが、今回の米中対立によって米国車も4割減となっている。

■早晩販売減少に歯止め
もっとも、以下の3点を受けて、早晩自動車販売の減少には歯止めがかかり、持ち直しに転じると見込まれる。

第1は、政府による需要刺激策である。このところ、政府は景気失速に対する危機感を強めている。2018年12月に輸入総額が急減するなど、リーマン・ショックが発生した2008年、チャイナ・ショックがあった2015年と似た需要変調の兆しがみられる。昨年から政府は金融緩和や個人所得税減税などを実施したものの、その景気下支え効果が顕在化するのに時間がかかっている。そのため、即効性の高い自動車需要刺激策が検討されている。

1月29日、中央政府は「進一歩優化供給推動消費平穏増長促進形成強大国内市場的実施方案」を公布し、地方政府に対して自動車購入補助金の導入を容認すると表明した。同方案では、補助金の規模についての規定はないが、マクロ経済が厳しい局面にあることを踏まえれば、補助金は相応の規模となる見通しである。中央政府は、金融面で地方の財源確保を支えるとみられる。すでに、2018年12月の中央経済工作会議では、本年の経済運営方針として、地方債発行枠の大幅拡大を決定済みである。

さらに、小型車減税措置を再導入する可能性もあろう。2009年、政府は農村部の自動車購入補助金と都市部の買い替え補助金、小型車減税措置を同時に導入した。当時に比べ、足許の環境は企業部門の活性化が難しく、景気対策の選択肢が限られる分、自動車需要刺激策が重視されるだろう。

第2は、米中対立の一時的な緩和である。貿易戦争が一段と激化すれば、内需のみならず、外需からも景気下押し圧力の増大が避けられない。それを懸念する中国政府は、米国による追加の関税引き上げを回避するために、通商面で一定程度譲歩するスタンスに転換しつつある。追加の関税引き下げが回避されれば、金融資本市場で好感されるだけでなく、米国車を買い控えする動きも弱まると見込まれる。

第3は、所得水準の上昇による長期的な市場拡大である。今年も、名目所得は年率5~10%程度の上昇ペースを保つとみられる。中国の自動車普及率はいまだ7人に1台と、日本の2人に1台に遠く及ばない。時々の経済イベントで振らされる面はあるものの、もう少し長い目で見れば、所得水準の上昇を受けて、普及率がさらに高まる可能性が高い。
以上から、足許の自動車販売の落ち込みは早晩終息すると判断され、下振れ要因が薄れるにつれ、再び自動車販売は増加トレンドに戻っていくと見込まれる。
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