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CSRを巡る動き:CSR情報開示媒体はステークホルダーに合わせて多様化へ

2019年02月01日 ESGリサーチセンター


 CSR情報開示の最も一般的な形式はCSR報告書や統合報告書でしょう。これらを作成する企業の実務担当者やそれを銘柄選定に活用する投資家にとって、こうした報告書は半ば所与のものとしてとらえられています。さらに比較可能性についての改善の余地についても認識されており、開示基準の改善に熱心な実務担当者も多く存在します。

 一方で最近のSDGsブーム等でCSRに関心を持ったステークホルダーにとっては、CSR報告書や統合報告書は、やや敷居の高い媒体となってきているかもしれません。先述のように開示基準が改善してきた結果、上記の報告書はかなり幅広い内容をカバーするようになりました。その結果、企業によっては1)先述の報告書とは別に、環境問題や社会貢献については特別に報告書をまとめていたり、2)取組等の定性情報と活動実績等の定量情報を別冊にしたり、3)関連する内容を一冊にまとめていても100ページを超えたりしています。

 一部の読者の使いにくさという懸念に応えるかのようにCSR情報を短い動画にまとめ、報告書やその他情報への呼び水にする企業が増えてきています。1980年代から2000年代初頭までに生まれたミレニアル世代層がスマホアプリ等で作成した動画を個人で投稿したり、ユーチューバーによる動画配信がマーケティングの手段として台頭してきたりしているのと同じように、CSR情報についても動画配信の動きが出てきていると言えます。日本のある電気機器メーカーは自社の中期経営計画について「モノづくり」「健康」「移動」「エネルギー」といったキーワードをまじえ、本業を通じた社会貢献の内容を30秒の動画にし、公開しています。またあるアパレル大手企業は最新のサステナビリティレポートにおける「サプライチェーン」「商品」「店舗とコミュニティ」「従業員」の4つの重点領域について、2分30秒ほどのダイジェスト映像を公開しています。

 このような映像表現は、とりわけCSR担当部署以外の自社従業員への研修や就職活動を控える大学生・大学院生への情報提供には効果的ではないかと注目しています。特に大学生・大学院生はスマートフォンでSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)での投稿・閲覧、動画視聴を日常的に行っており、平成29年版情報通信白書によると他世代と比べ2倍以上の時間をこれらに費やしています。もちろん企業にとって、短時間の動画ではあくまでCSR活動のイメージを伝えることが目的であるため、詳細な内容を含むCSR報告書や統合報告書に取って代わることはないでしょう。また企業が過去に起こした不祥事やその事後対応といった内容は短い動画では説明しきれないため、企業活動のポジティブな側面を強調した内容になりやすいという側面はあります。しかしCSR活動は企業が単独でできる性質のものではなく、幅広いステークホルダーとともに取り組んでいかなければならないことを考慮すれば、このような媒体の多様化も新たな意義を持つと言えそうです。
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