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【シニア】
第32回 シニアの心に火をつけ、明日へのワクワクをよみがえらせる仕掛けとしての「Shift↑リビングラボ」

2018年12月11日 沢村香苗


 このメールマガジンでのギャップシニアを題材とした連載は32回目となりました。今回も、約3年間の「ギャップシニア・コンソーシアム」での活動を通じて私たちが感じてきたこと、これからやろうとしていることを皆様にお伝えします。

 2014年の活動開始当初は、世の中にたくさんある商品・サービスの情報と、シニアが「続けたいこと・やりたいこと」をマッチングさせることで、シニアのあきらめ・がまんを解消できると考えていました。しかし、実証の中で商品・サービスを提案してみても、シニアの反応は鈍いものでした。加齢により多少の不便が生じているといっても、商品・サービスを購入して解決するほどではなく、100点満点で言えば80点程度の「わりと満足」な生活をしているのが多くのシニアの現実だということが浮かび上がってきました。
 
 では、私たちは火のないところに煙を立てようとしていたのでしょうか?ある意味でそれは真実だったかもしれません。私たちがシニアとお話しして強く感じたことは、今日の80点の満足度が、それが続くにせよ続かないにせよ、次に自分は何をしたらいいのかわからないという困惑を多くの方が抱えているということでした。お話の最後に「80歳になったけど、もう飽きたよ。元気だけど、もういいよ」と言った男性の悲しい顔が印象に残っています。2017年時点で、70歳の人の平均余命は男性で15.73年、女性で20.03年です(※1)。70歳で「心の火」を消して、「余熱」で生きていくには、今の人生は長すぎるのです。私たちは、煙を立てる前に、シニアが心の火(やりたいこと/欲求)を終生保ち続ける仕組みを作ることが必要と考えるに至りました。

 私たちはこれまで、(株)ダスキンが運営する「わこう暮らしの生き活きサービスプラザ」や、ハウス食品グループ本社(株)が八千代市社会福祉協議会と連携して運営する「八千代リビングラボ」においてリビングラボ活動(参照:第17回 世界と日本で広がるリビング・ラボの活動)を行ってきました。その中で「仕事を選ぶときに何を重視する?」「最近の贅沢は?」といった日頃の話題には上らないような質問を投げかけたり、最新式の電動車いすの試乗などを行ったりしました。このような活動を通じて、日常にない刺激を受け、シニア本人が思いもよらない、あるいは忘れていた自分の一面を発見して目の輝きがよみがえる場面を何度も目にしました。この「自分を再発見する、ワクワクがよみがえる」作用を多く起こす仕掛けとして、従来のリビングラボを「Shift↑リビングラボ(仮称)」にバージョンアップします(「Shift↑」は、キーボードのShiftキーから来ています。いつもと少し違うことを起こすイメージです)。

 「Shift↑リビングラボ(仮称)」の主な機能は、2つのDです。
●Defrosting(解凍機能):自分でもわからなくなっている・眠っている価値観や欲求を再び知り、表現する
●Development(展開機能):今まで考えたことがなかったようなこと、まだ起こっていないことについての意見や価値観を知り、表現する
この2つのDによって、シニアが自分のやりたいこと・大切なことを明確に持ち続けることができると考えています。それさえあれば、その手段として商品・サービスを求める動きは自ずと出てくると期待しています。

 「Shift↑リビングラボ(仮称)」では、シニアに対して新しい刺激を提供してみたいという提案を歓迎します。このメルマガを読んで、興味をお持ちになった方はぜひご連絡ください。ラボといいながらも生活の中の場ですから、「実験条件」は整わない側面もあり、きれいに粒の揃った「モニター」からデータを取るには不向きです。提案者側が自分のアンテナを立てて、シニアを刺激し、時に脱線しながら、「リアル」「本音」を感じ取るというライブ感がラボの魅力です。ミラールームの向こう側で指示を出したり、たくさんのグラフが載ったレポートを読むことに飽き足らなくなったりした方の参加をお待ちしております。


(※1 )資料 厚生労働省大臣官房統計情報部人口動態・保健社会統計室 『平成29年簡易生命表』

この連載のバックナンバーはこちらよりご覧いただけます。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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