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【次世代農業】
次世代農業の“芽” 第13回 「産地間競争からグループ間競争へ」

2018年11月27日 山本大介


 2018年9月に上陸した台風21号では関西空港連絡橋に貨物船が衝突した事故が衝撃を与えましたが、農業にも大きな被害が出ました(毎日新聞9月28日付記事によると近畿2府4県で被害額110億円超)。台風だけでなく、豪雨・豪雪・高温・低温など近年の気象は極端な水準に達することが多くなっており、農業生産への影響も大きくなっています。
 また、成熟市場で競争が激化している食品・外食業や小売業では消費者ニーズの変化にあわせ高い頻度で商品の改廃が行われています。材料・原料となる農産物の調達も不安定になりがちです。
 このように農産物の生産や調達に影響する要因の変動は大きくなっており卸売市場を通じた需給調整だけでは対応しきれなくなっているのが実情です。

 この状況に対して、筆者は「サプライチェーン関係者がグループ化し、新たな枠組みで農産物流通体制を作る」ことが有効と考えています。
現在、筆者は農林水産省「革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)」において「きく類生産・流通イノベーションによる国産シェア奪還」研究(以降、「当該研究」)に参画しており、国内の複数のきく産地や流通関係者の方々のご意見を参考に生産・流通のあり方を検討しています。その中で以下のような課題がみえてきました。
 1)各産地で生産・流通の技術や体制はまちまちで生産性や出荷精度に差異があること
 2)商品や物流の規格がまちまちで効率低下や品質劣化の要因になり得ること
 3)生産・出荷・需要の情報は寸断されており市場での需給調整が限界に達しつつあること
 こうした課題は卸売価格の著しい上下動となって顕在化しますが、不確実性が増す気象変動の中で国内生産者や流通業者はリスクを負いきれない面があり、広大な生産地でバッファを持つことで安定的に供給される輸入品に対する競争力を発揮できずにいました。
 当該研究では技術開発のアプローチから出荷精度の向上や産地・流通業者が出荷情報をやりとりできる基盤作りなどに取り組み技術実証成果は得られつつありますが、今後はそうした技術の普及段階となります。
 
 農業生産は情報産業のように高頻度で「修正する」「やり直す」ことができないため、生産者は新しい技術導入に対しては保守的であるのが当然です。
 そこで、「新技術のリスク」「気象・病害虫のリスク」など各種リスクを分担するためのサプライチェーン関係者が枠組み(グループ)を作ることが有効です。グループでは
 ①商品規格 ②生産技術・出荷方法 ③物流規格・物流方法 ④出荷計画 ⑤リスク対策
が関係者間で統一・共有されるのが望ましいでしょう。これまでにも業務用農産物の契約取引では類似した取組みがありますが、「①~⑤をパッケージで標準化」「地域や業種を跨いだ枠組み」についてはまだまだ不十分です。
 産地内部ではこうした取組みに対する合意形成と管理が欠かせませんが、必ずしも従来の枠だけに捉われることなく、キーマンを中心とした意思決定の早い組織体を作るなど工夫も必要でしょう。共通的な情報システムや機械・設備なども導入していく必要があります。農業あるいは農産物流通に関わる組織・企業にはこれら新たなグループの動きに対する積極的な支援・投資が望まれます。

 卸売市場法の改正に伴い、市場外流通の増加が見込まれます。市場外流通では小売・外食・中食などの実需者にとって「売れるものを安定的に」調達するための仕組みづくりが行われることが多いですが、それに対して供給者である産地は受身にならず、積極的に規格や技術提案を行っていくべきでしょう。「複数産地、流通、実需」が連携したグループ間の競争激化を見越した戦略が関係者に求められます。


図表1


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※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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