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変わりゆくスマートシティのあり方

2018年10月23日 七澤安希子


 従来、スマートシティとは、先進技術を活用し、都市全体のエネルギーの効率化や防災能力の高度化を実現した都市を指すと考えられてきた。しかし最近のスマートシティでは、先進技術によるQOL(生活の質)の向上や社会的な課題解決にも焦点が当てられ始めている。

 この変化の背景には大きく2つのことが考えられる。第一に、IoTやAIといった技術的進歩である。個々の人やモノに紐づくデータを収集・分析しQOL向上に資する価値に転換できる基盤が整備されつつあり、交通や医療の観点から都市の付加価値を創出しようとする考え方が広がっている。第二に、開発デベロッパーや自治体の意識の変容である。新興国においても、民間の開発デベロッパーが土地の価格上昇につながる取り組みだけでなく、国の産業高度化や生活水準の向上、教育等に資する都市のあり方を考えるようになっており、社会的価値を持った都市の創造というニーズは着実に広まっている。

 私が携わっているタイの工業団地開発プロジェクトもまさに社会的な課題解決を目指すスマートシティである。食品関連製造業を本業とする現地開発デベロッパーは、「タイの食産業を高度化し、あらゆる人が健康的な食生活を送れる社会の実現」に資する工業団地を目指している。もちろん、営利企業であるため事業の多角化や本業との相乗効果といった戦略を持ちつつも、それだけでなく、政府、自治体、産業界、周辺住民までステークホルダーとして捉えながら、さまざまな主体とwin-win関係となる工業団地開発に取り組もうとしている。具体的には、当社を含む日本企業と日本の自治体が現地開発デベロッパーを支援し、消費者と企業の直接接点が設けられた新しいコンセプトの付加価値型工業団地を検討している。このような直接接点の場を活用し、食育、商品のテストマーケティング、商品開発等を、消費者データと連携させながら行うことを構想している。これによって、タイの食産業の高度化や健康的な生活の推進につなげていこうという狙いだ。仮に、その実現に日本企業が確かな存在感を示すことができれば、今後、新興国の都市開発において、開発デベロッパーや自治体から日本のノウハウや技術が求められる機会も増えていくに違いない。

 来月には、横浜でアジアの新興国が集まり、持続可能な開発目標(SDGs)とスマートシティ開発との連携をテーマにしたアジア・スマートシティ会議が開催される。会議の成功を願うとともに、スマートシティの枠組みを広げ、日本企業のビジネスチャンスの拡大に向けたマイルストーンとなることに期待したい。

ご参考)第7回アジア・スマートシティ会議


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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