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インドで進む、水と土壌のプラットフォーム

2018年09月25日 泰平苑子


 短い梅雨、連日の酷暑、局所的大雨そして大型台風など、今年は浸水や土砂崩れなど日々の生活を脅かす自然災害が発生した。被害を受けられた多くの方に、謹んでお見舞いを申し上げたい。
 実は、日本では気象観測データや豪雨実績数値などをもとに、浸水ハザードマップが作成されている。土砂崩れの危険性がある地域では、傾斜データと共に、水分量・振動などを検知する土砂災害予測システムが導入されている。このようにビッグデータやセンサーを用いた災害予測により、危険区域の見える化が進められてきた。ただ、実際に自宅や勤務先の浸水危険性を知る人は少ないのではないか。さらに、避難指示が出た地域でも、まだ自宅は大丈夫なのではと思い避難をためらった方もおられたそうだ。改めて私も自宅の浸水ハザードマップを確認してみると、0.5~1.0mの水深域だった。0.5m以上の浸水は大人でも足元をすくわれ、避難が難しくなるという。

 この水資源と土壌に関するデータベースで一日の長を有するのがインドだ。インドでは、水資源リスクと土壌成分の全国的プラットフォームが整備されている。水資源のプラットフォーム「India Water Tool」では、池や河川などの地表水や地下水の水源観測情報と、国際機関の指標を用いた水ストレスのマップが提供されている。データや集計結果はエクセルおよびレポート形式でダウンロードできる。運営は複数のインド企業が協働で担っている。この水資源プラットフォームにより、水資源管理の優先順位を付け、河川流域の農業、産業および自然環境に直面する水資源リスクへの早期対処が可能になった。土壌のプラットフォーム「Solid Health Card」は、農業の農薬や肥料の適正使用を促し、生産性を改善するために、インド政府が立ち上げたプラットフォームである。農家が提出した土壌サンプルを分析し、土壌成分や水分量をマップやグラフで可視化している。土壌サンプルの分析結果は土壌健康カード(Solid Health Card)にまとめられ、農家はWebサイトや携帯アプリで受け取ることができる。土壌健康カードを活用することで、肥料や農薬の適性利用を農家個別に提案でき、費用削減や収穫量拡大が実現した。

 上記プラットフォームの特徴は、多目的に活用できる基本データを中心に公開がなされ、専門知識が無くても理解ができるよう可視化されている点にある。しかも、比較的最新の情報を確認できる。インドは国土が広大で気候も多様性に富んでおり、地域ごとに水資源と土壌の課題は大きく異なる。そこで全国共通で情報を共有すべき部分をプラットフォームが担い、後は無料のデータ提供やAPI連携により地域の特性に合わせて自由に活用できる仕組みとなっている。

 日本でも地域別に水資源や土壌の情報を収集しているものの、残念ながらそれらの用途は防災システムなどに限定されている。全国に設けてある気象観測機器をフル稼働させて水源と土壌の観測を行い、その情報を誰もが使えるプラットフォームにも公開すれば、平時も非常時にも活用でき、人々が自分の暮らす地域の特性を知る機会を増やせると考えるが、いかがだろうか。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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