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海外面的開発における公的支援・関与への期待(2)

2018年09月11日 中村恭一郎


 前回、日本総研が東南アジアや中国での面的開発に取り組んできた経験から、そこで期待される公的支援・関与は次の3つであると考えていること、そしてそのいずれもが民間企業の力だけでは実現や問題解決が難しい課題であると感じていることを述べました。

① 現地情報収集における公的支援・関与
② 現地との合意形成における公的支援・関与
③ 開発予算の確保における公的支援・関与

 今回は、「①現地情報収集」について、具体的な課題と、解決策としての公的支援・関与への期待を整理したいと思います。

面的開発には、国、地方政府、地域住民、現地企業など様々なステークホルダーが関わります。このため、開発ニーズも「環境問題を解決したい」、「最先端の技術で生活者の暮らしを便利にしたい」、「先進国企業と連携して技術習得を進めたい」、「新興国市場への参入機会と位置づけたい」などというように複合的です。開発参画を目指す日本企業にとっては、様々なニーズの発信源を広範にカバーし、誰に提案をぶつけていくべきかを見定めることが重要となります。

 しかしながら、現地側のステークホルダーを満遍なく洗い出し、誰が開発案件をグリップしているのか、意思決定を出来るのはどの組織の誰なのかを判断することは、民間企業にとって容易なことではありません。とりわけ、国レベルで推進されるプロジェクトの場合、様々な省庁や政府関係機関が関わり、情報伝達や意思決定の構造は非常に複雑なものとなることもしばしばです。他方で、非常に強い権限を有する“キーパーソン”が居て、その人物が矢継ぎ早に出す指示でどんどん物事が決まっていくという案件も存在します。

  また、現地側で何がどこまで検討済なのか、その現状を把握することも簡単ではありません。現地側で作成されたドキュメントを初期段階で入手することが望ましいのですが、そうした資料は往々にして「後出し」されます。日本企業にとってみれば、提案の前提条件を読み誤ったり、参画後の検討内容に手戻りが生じたりといったリスクに繋がります。

 私は、現地情報収集に関する課題解消に向けた公的関与・支援として、G to G(政府対政府)協議を強化することが、打ち手として依然重要度が高く、有効だと考えています。

 最近では、いわゆる「トップ外交」も含めて積極的に海外現地政府との協議が行われており、現地状況を把握する目的で組成、派遣される「官民ミッション」も多く見られるようになりました。こうした取り組みは非常に重要ですし、このような機会を積極的に活用していくことが望まれます。

 こうした中、さらに何を強化するかですが、例えば、
● 中央政府同士の協議には出席していなくとも、地方政府、政府系研究機関、現地民間企業などに重要ステークホルダーが存在する場合には、紹介していただくこと
● 意思決定の実権を有する組織や人が誰なのかを紹介していただく、または、G to G協議の場で「指名」していただくこと
● 現地側で作成された資料等があれば早期に提供していただくこと、あるいは、提供を指示していただくこと
など「日本企業が求める現場情報の収集をG to G協議を通じて行う」ことが挙げられます。

 こうした日本企業への側面支援は、一見G to G協議の話題にはそぐわないように見えてしまうのか、わが国政府や政府関連機関の側で、あまり意識されていないと感じることがままあります。
 
 次回は、「②現地との合意形成における公的支援・関与」と「③開発予算の確保における公的支援・関与」を取り上げます。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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