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CSRを巡る動き:ブロックチェーン技術を用いたサプライチェーン管理と金融サービスの拡充

2018年06月01日 ESGリサーチセンター


 企業の持続可能性(サステナビリティ)の観点からのサプライチェーン・マネジメント強化にあたって、ブロックチェーン技術の活用に注目が集まっています。ここ2年ほどは食品業界において大型実証事業が立ち上がる動きが目立っており、例としてIBMが中心となったブロックチェーンを活用した食品サプライチェーン構築プロジェクトの発足(2017年8月)、英ケンブリッジ大学のサステナビリティ・リーダーシップ研究所(CISL)が立ち上げたブロックチェーン技術を用いたサプライチェーン管理の実証実験プロジェクト(同年12月)、世界自然保護基金の太平洋中部及び西部での生鮮と冷凍マグロのトレーサビリティプロジェクト(2018年1月)などが挙げられます。

 食品は農作物の栽培、家畜・家禽の肥育、魚類の養殖を起点とする原材料調達段階から加工された商品が消費者の手元に届くまでに複数の企業や国・地域を経由することが多く、サプライチェーン全体のトレーサビリティやデータの確実性を担保することが容易ではありません。他方、アレルギー、宗教上の制約、加齢による身体機能の低下、健康志向などの様々な理由から、食の安心安全に対する消費者の意識は近年ますます多様化しており、それに伴って食品関連企業も詳細に至るまで情報を開示する必要性に迫られています。加えて、食品汚染などの問題が発生した際にいち早く要因を特定、対処することも強く求められるため、データ改ざんリスクの回避やタイムリーで確実なトレーサビリティの実現が可能なブロックチェーン技術の活用に企業が高い関心を寄せているのです。

 上記のIBMの食品サプライチェーン構築プロジェクトで同社が開発したのは、サプライチェーン上の全てのトランザクションデータを一元的に管理するシステムです。このプロジェクトには食品関連の大手企業であるユニリーバ、ネスレ、ウォルマートを含む10社が参画し、IBMのシステムを試行運用しています。従来は流通の過程で発生していた書類の記載ミスや紛失、また意図的な改ざんの防止に加え、生産者や加工業者、流通業者などの情報へのアクセス速度向上に関する効果検証を行います。

 CISLが立ち上げた実証プロジェクトは食品製造企業や小売企業だけでなく、バークレイズ、BNPパリバ、スタンダードチャータード銀行などの金融機関が参画していることが特徴です。実証期間は1年間で、参画企業と英国国際開発省から合計60万ポンド(約9,000万円 ※1)の予算が拠出されました。IBMと同様に、このプロジェクトでもサプライチェーン管理システムが原材料調達から小売店の店頭に並ぶまでのサプライチェーンのモニタリングを行っています。注目すべきは、サプライチェーン管理システムで収集したデータを元に、金融機関が顧客への新たなサービスの提供の検討を進めていることです。既存のシステムではアクセスできなかった社会及び環境関連データが正確かつ即時収集できるだけでなく、特定業種または国・地域によっては規制順守モニタリングやその他信用情報入手のコスト削減が見込めるためです。CISLの実証プロジェクトでは、原材料調達先である小規模農家から収集した生産量や品質、労働環境等データを元に、各金融機関の社会・環境サステナビリティ基準を満たしていると判断されれば、金融機関が融資基準の優遇や信用付与を行うことを検討しています。これにより、小規模であるがゆえに融資や投資を受けにくかった農家が生産性向上のための投資を行うことが可能になります。プロジェクトの結果が発表されるのは来年になりますが、特に持続可能な開発に資する金融サービスの拡充といった成果が期待されています。

※1. 2017年12月12日時点の為替レート 1ポンド=151.17円で換算
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