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【シニア】
第26回 シニアとの顧客接点では洞察的アセスメントが重要

2018年03月13日 齊木大


 ギャップシニアコンソーシアムで取り組んできた成果の一つが、シニアとの顧客接点の開発である。
 B2Cシニアビジネスでの顧客接点では、既にさまざまなところでも指摘があるように、次のような難しさがある。

 第一に、シニアが自分自身のニーズに気づかない、言葉にできない、ニーズに気づいても受け止めようとしないことである。シニアのニーズは生活環境の変化や加齢による心身の状況の変化が背景にあるが、同居家族の独立や入院など、分かりやすいライフイベントが無い限りそのニーズに気づきにくい。
 第二に、新しいソリューションの情報を得る機会・チャネルが少ないこと。高齢になると、現役世代と比べて新しい情報を取りに行く意欲が小さくなり、情報を得るチャネルも縮小する。これはソリューションを提供する側からすれば、シニアに情報を届ける機会・チャネルが少なくなることを意味する。
 第三に、シニアは情報の処理・判断自体に面倒を感じやすいことである。加齢や生活の範囲が縮小することが影響して、いくつかの選択肢を検討・吟味して選ぶことを億劫に感じるようになる。したがって、じっくりと考え検討してもらわないといけないようなソリューションであると、「検討する作業」が重荷と感じられソリューション自体が避けられてしまいがちになる。
 こうした難しさを乗り越えてあるソリューションを選んでもらうには、健康食品などのプロモーションで実践されているように、シニアが比較的見ているチャネル、つまりテレビや新聞・雑誌を通して、ニーズを喚起しかつ期間限定などの見せ方で判断の期限を切り決断を促すやり方が、一つの成功例として知られている。これはいわばプッシュ型のアプローチである。
 一方、ギャップシニアコンソーシアムが目指してきたのは、これとは対極にあるプル型のアプローチである。提供側の理屈ではなく、あくまでもシニアの生活に寄り添って真に必要と思われる情報・ソリューションを提供しようとするものとなっている。特に今後は都市部を中心にシニアの独居世帯が増える。こうした世帯にとって、これまでは家族が果たしてきたような「生活のもろもろにおける判断・意思決定のサポート」などの機能の実現を目指してきた。

 ギャップシニアコンソーシアムでは、シニアとの接点を持つ場を地域プラットフォームと位置付け、会員企業とともに顧客接点のあり方を模索してきた。その結果得られたシニアの顧客接点におけるポイントは次の二点である。
 第一は、顧客との関係性の段階に応じたリレーションマネジメントである。前述二点目に挙げた難しさに関係するが、シニアにとって安心でき、かつ有効なチャネルとして見られるようになることが重要であり、そのためにはその個人から見て地域プラットフォームがどのような距離にあるかを捉え、その関係性の進化の段階に着目した顧客管理が重要になる。コンソーシアムでは簡易な顧客管理システムを試作して活用している。
 第二は、これが最も重要であるが、洞察型のアセスメントである。関わりを持ったシニアに対し、シニアが発言するニーズだけを捉えて情報を提供するのではなく、発言を総合して分析し、「ひょっとしたらこのようなニーズがあるかもしれない」と洞察して情報提供し、その反応を踏まえてさらに提供する情報を切り替えていくのである。この部分は、要介護高齢者向けのケアマネジメントの手法を参考に応用することができる。この間の活動を通じて、日本総研ではケアマネジメントの方法論を元に分析・提案のプロセスについて特許出願を進めている。

 ここまでの3年間で、シニアとの顧客接点におけるプロセスおよびそのプロセスを管理するための方法とシステムの基本形が出来上がった。また、現場の事業として見ても、顧客(会員)の蓄積も増え、相談~情報提供~ソリューション提供のフローが立ち上がりつつある。
 基本的な仕組みが完成した次の段階として、今後はこの動きを拡充し、シニアへのさまざまな情報提供・ソリューション提案を加速させていく予定である。

この連載のバックナンバーはこちらよりご覧いただけます。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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