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地域エネルギー事業を広く普及させるために必要な共通システム

2018年02月27日 程塚正史


 東京が数年ぶりの大雪に見舞われた翌日、山形県の最上町を訪問した。奥羽山脈の真ん中にある豪雪地帯だ。東京の雪も交通機関を乱すなど突発的に生活への影響を与えたが、最上町ではそれが日常的だ。寒さも厳しく、冬の暖房費用の高さは行政でも民間でも悩みのタネだという。道路を融雪したいが、コストがかさむため我慢せざるを得ないとも聞いた。支払われるエネルギーコストは、ほとんどが域外に流出してしまうなら、せめて、なんとか域内循環につなげることができないかと考えたわけが改めて理解できる。

 最上町は、木質バイオマス資源を活用したエネルギー事業で有名だ。病院や高齢者施設などを集約した地区や、町が設営している移住者向け住宅地で、町内の木質資源によるボイラーで熱供給している。

 このような、地域資源を域内で消費するとする地域エネルギー事業は、地域のためになる。木質資源を燃料として活用すれば、エネルギー支出を域内で循環させることができる。経済効果だけでなく、災害時には非常電源になる。CO2排出量も削減できる。また、地域の誇りという心理的な効果もある。

 では今後、日本全国どこでも地域エネルギー事業ができるかというと、そう簡単ではない。最上町では、様々なリスクを取って行政が率先して事業化を推進した。町内のエネルギー関連や林業関連事業者の積極的な協力もあった。最上町に限らず、地域エネルギー事業の先進地として名前が挙がる地域は、その推進主体になんらかの特徴がある。岩手県紫波町での事業は、町内の事業者の長年にわたる試行錯誤の末に結実した。北海道下川町も、自治体を中心に町を挙げての推進により熱供給事業が広がっている。

 このような先進事例は、良い意味で特別だ。そのため横展開は簡単ではない。もちろん、地域に根ざした事業はその地域独特の事情を考慮する必要があるものの、共通化のカギはどこにあるのだろうか。

 地域エネルギー事業では、木質という生物資源を使うため、発生熱量の変動や不純物の混入など何らかの突発変化が起きることがある。しかもその現場の運営は、必ずしもエネルギーの専門家ではない域内事業者が担う。さらに、エネルギー設備はいったん導入すれば20年程度は運転せねば償却できない。このような課題を突破し、全国各地で木質資源による地域エネルギー事業が展開されるようになるには、次の要件の共通化が必要となると考えられる。

 まず、地域に設置する小規模な設備を汎用化させることだ。大型になると地域外の資源を持ち込まざるをえないなど無理が生じるため、域内で完結できる範囲で持続的に地域資源を使える規模の事業がいい。だが現在活用可能な汎用設備は、一般的には数百kW以上のものだ。この十分の一程度のシステムが望ましく、そのためのハードの設計と汎用性確保が必要だ。

 次に、地域に設置する設備を中央制御できることだ。地域エネルギー事業がその地域に貢献することは当然だが、突発的な状況変化に対応し、維持管理コストを抑え、燃料を効率よく活用するために、設置する小規模設備をIoT制御し最適運用する仕組みが必要だ。その制御の主体やデータセンターは必ずしも地域に根付く必要はなく、制御システムは共通化して効率的に行うべきだ。

 最後に、燃料のサプライチェーンの管理ノウハウの共通化だ。現実的な課題として、地域愛があっても事業性がなければ持続できない。木質資源による地域エネルギー事業の採算性は、燃料価格に大きく左右される。そこで、安価で安定した燃料調達が必要条件となり、そのためには地域での資源管理が必要になる。地域で産出する材の加工方法、保管方法、運送方法にノウハウがある。この共通化も必要だ。

 日本総研は、全国で横展開可能な地域エネルギー事業に必要なシステムの構築と普及を目指している。その社会的意義と可能性を感じる大手企業によるコンソーシアムを組成し、次の先進地となる志のある地域と協力して検討を進めている。3つの共通化は簡単ではないが、政府とも協力しながらシステム構築を検討している。

 現時点では先駆的な地域でしか見られない地産地消型のエネルギー事業が、各地で当たり前のように行われる社会としたい。こうした動きが、人口減が不可避の日本において、地域の希望の一つになればと思う。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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