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CSRを巡る動き:経団連「企業行動憲章」を改定

2018年01月09日 ESGリサーチセンター


 2017年11月8日、経団連は「企業行動憲章」ならびに「企業行動憲章 実行の手引き」を、7年ぶりに改定し、公表しました。経団連では、1991年から会員企業に求める行動原則として「経団連企業行動憲章」を制定しています。
 今回の改定では、「企業は、公正な競争を通じて付加価値を創出し、雇用を生み出すなど経済社会の発展を担うとともに、広く社会にとって有用な存在でなければならない」という前文の冒頭が「企業は、公正かつ自由な競争の下、社会に有用な付加価値および雇用の創出と自律的で責任ある行動を通じて、持続可能な社会の実現を牽引する役割を担う」と変更されました。ここでは「持続可能な社会」という言葉が、前文後半から前半に移動し、「その実現を牽引する役割を担う」と明記された点が注目されます。

 この背景には、2015年9月に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の存在があるようです。今回の改訂に当たっても、「SDGsの特徴として、SDGsはその前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)とは異なり、貧困や飢餓といった途上国を中心とする社会的課題のみならず、経済成長や働き方の改革、環境・エネルギー、ジェンダー平等など先進国を含めた万国共通の課題が網羅されており、まさに包摂的で持続可能な社会の実現に向けた国際的な統一目標といえる」、「日本全体として、SDGs達成に向けた取り組みが進展しつつある。SDGsが目指す社会の実現には、社会の大きな変容(トランスフォーメーション)が必要とされており、とりわけ企業・経済界には、その役割として2030 アジェンダに明記されているとおり『課題解決のための創造性とイノベーションを発揮する』ことが期待されている」との認識が示されています。

 憲章を構成する10原則のうち、第一の原則は「社会的に有用で安全な商品・サービスを開発、提供し、消費者・顧客の満足と信頼を獲得する」から「イノベーションを通じて社会に有用で安全な商品・サービスを開発、提供し、持続可能な経済成長と社会的課題の解決を図る」という表現に改められました。多くの企業で、いま、自社の事業セグメントや商品・サービスとSDGsの17の目標を紐付ける作業が進められているようです。
 最近では、企業のCSR担当者の方々から、「ようやくCSRは社会貢献活動だという社内の理解を払拭できるようになった」、「××をしてはならないというようなCSRの手かせ足かせ感から解放された」、「CSRの延長線で、儲けることを口にできるようになってホッとしている」といった声も聞かれるようになりました。ほとんどの企業で「商品・サービスを開発、提供し、持続可能な経済成長と社会的課題の解決を図る」という概念は、前向きかつ肯定的に受け止められているようです。
 ただ、果たして何かを変えられるのか、という点について、自社の事業セグメントや商品・サービスとSDGsの17の目標を紐付ける作業だけでは、成果が出るわけではないという点には注意しなければなりません。これまでの商品・サービスに限界があったからこそ、持続可能な経済成長が実現できず、さまざまな社会的課題が噴出しているという現実があります。「イノベーション」という言葉は、単なる「技術進歩」や「技術革新」に留まりません。本来、シュンペーターは「経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは全く異なる仕方で新結合すること」と定義しました。

 この十年ほどのあいだにも、わが国企業はBase of Pyramid(購買力平価で年間所得が3000米ドル未満の層の人口は約40億人存在し、世界人口の約72%を占める。彼らの購買力は巨大であり、この層を新たな顧客・ビジネスパートナーとするという考え方)やCreating Shared Value(企業が事業を営む地域社会や経済環境を改善しながら、自らの競争力を高める方針を掲げその実行という考え方)に共鳴し、大きな関心を払ってきました。しかし、その実践や成果獲得を成し得たかと冷静に分析すると、残念ながら実態は捗々しいとはいえません。

 粗雑の誹りを恐れずにいえば、その理由は多くの企業で、非連続的な変化を忌み嫌う風土、社内での軋轢を回避するという風土が、いつの間にか出来上がってしまったことに由来するのではないでしょうか。新しい企業行動憲章が、しがらみに囚われない「商品・サービスの開発、提供」によって、「持続可能な経済成長と社会的課題の解決を図る」日本企業の出現を導くものになることを願わずにはおられません。
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