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未来創造型人材育成ツールとしての未来洞察

2017年10月31日 橘田尚明


人材育成ツールとして三つの効用を持つ未来洞察
 デジタル化の進展によってますます社会の変化スピードが加速していく中、企業の新陳代謝もしくは自己変革機能として新規事業創出の必要性が増している。日本総研では、未来洞察を活用した新規事業立案の支援を行っているが、参加者の意識改革や能力向上といった人材育成面での効用を評価いただくことも多い。
 そこで、本コラムでは人材育成という観点から、未来洞察が持つ「未来リテラシーの向上」・「主体性の醸成」・「異分野への情報感度向上」の三つの効用をご紹介したい。

未来洞察の基本フレーム
 三つの効用をご紹介するための予備知識として、未来洞察の基本フレーム*について概説しておく。未来洞察の基本フレームは、自社が属する業界の変化を含んだ「未来イシュー」を横軸に、自社と関連性が低い外的環境の変化を含んだ「社会変化仮説」を縦軸に設定し、両者を掛け合わせて新規事業のアイデアを「強制発想」するというシンプルな構成となっている。各段階で思考方法が切り変わるため、それぞれの場面で得られる効用は異なってくる。
 未来洞察の基本フレームと本コラムで紹介する効用との関係を示すと表1の通りである。

表1:未来洞察の基本フレームと本コラムで紹介する効用との関係


出所:日本総研作成


*未来洞察のフレームについてのより詳しい解説は、当未来デザイン・ラボウェブサイト「アプリケーションと事例紹介 」を参照されたい。

「未来リテラシー」の向上
 一つ目の効用は未来リテラシーの向上である。
 未来リテラシーとは未来を描くための情報の読解力、分析力および表現力などの総合能力を指す。未来洞察では未来を描くための基礎情報に大量に触れ、処理するプロセスが含まれるため、これらの能力を向上させることができる。「未来イシュー」を記述する段階では、自社資産や自社が直面し得る課題などの蓋然性の高い変化を記述する。この変化を記述するために、これまではどうだったかという過去情報や、なぜ未来がそうなり得るかを担保する上での予測情報(例:人口動態、技術ロードマップ、自社技術の開発計画等)を読み込む。
 これらの情報をインプットとして活用した上で「未来イシュー」を記述することになるため、情報を能動的に取り入れ、処理する機会となり、まさに使える知識としての蓄積が期待できる。

未来に対する主体性醸成
 二つ目の効用は未来に対する主体性醸成である。
 未来洞察では参加者の主観を未来像の多様性の源泉として積極的に取り込むため、描かれた未来像には参加者の主体性が自然に反映される。例えば、「社会変化仮説」を記述する段階では、未来を示唆する不確実な兆し情報を選択し、どのような未来像を示唆しているかを解釈する。この情報の選択と解釈が参加者の主体性を反映することにつながる。また、「強制発想」の段階で生まれる断片的な未来の製品・サービスのアイデアは、参加者が自社として目指していきたい未来像の表面化として生まれる。
 このため、アイデアが具体化していく過程で、参加者の主体的姿勢が育まれ、ぜひ自分が取り組んでみたいという意欲溢れる担当者が生まれることも多々ある。

異分野への情報感度向上
 三つ目の効用は異分野への情報感度向上である。
 未来洞察は5人前後のチームによるワークショップ形式を基本としている。専門性が高いテーマでの未来洞察を行う場合、業界情報や技術情報などは一度にインプットできる量にも限界があるため、経験豊富なベテランを交えたチームを編成することにより知識水準を担保する。また、同様の理由から、事業部や職種を横断したチームでの実施も多い。
 チーム編成の第一の目的は視野拡張や知識水準の担保であるが、組織、専門分野の壁を超えてディスカッションをすることになるため、参加者にとっては異分野の相手と対話する場となる。自身の専門分野への造詣が深いほど関連分野の情報ばかりに目が行ってしまうという、いわゆるタコツボ化現象を打破し、異分野への情報感度を向上させることができる。

未来創造型人材を育成する未来洞察
 以上、未来洞察が持つ人材育成の三つの効用についてご紹介した。将来の見通しが不確実な昨今においては、未来に対する感度を高め、主体的に未来を創造することが重要と筆者は考える。このような「未来創造型」の人材を育成するためのツールとして、未来洞察はまさに適した選択肢と言えよう。
以上




※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません
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