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日本総研ニュースレター 2017年7月号

「混合介護」の真価は異業種とのコラボレーションにある

2017年07月03日 齊木大


「混合介護」はケアの質と生産性の向上を目指す
 いわゆる「混合介護」について、国家戦略特区でのモデル事業の実施に向け、東京都と豊島区が設置する有識者会議での具体的な検討が始まった。平成30年度からのモデル事業で実施するサービス内容や事業者の選定に向け、6月2日に第1回会合が開催され、今後の方向性や検討項目が共有された。
 介護給付に基づくサービス(保険内サービス)と介護給付によらず全額自己負担で利用されるサービス(保険外サービス)とを組み合わせる「混合介護」の実現によって、多様なニーズに応えやすくなり、結果的にケアの質を高めたり、サービス提供の効率を高めたりすることが期待される。
 医療と異なり、介護保険制度においては保険内サービスと保険外サービスを組み合わせて提供すること自体は基本的に可能だ。しかし、両者を「明確に区分して」提供することが必須であったり、例えばデイサービスにおける保険外サービスの提供については原則として認められていなかったりする。さらにはこれらの判断が保険者ごとに異なっている点も含め、事業者から見ると「煩雑で分かりにくく、柔軟なサービスの実現を阻む障壁」になっている。
 財政だけでなく人的資源の側面からも制約が大きいこれからの社会状況では、生産性を飛躍的に高めるため、保険内外のサービスの組み合わせをより柔軟なものへと緩和していくことが必要だ。実際、5月23日に示された規制改革推進会議の第1次答申も、ルールの整理・明確化とともに規制緩和の検討などが盛り込まれたものになった。

「介護」以外との組み合わせにこそ効率化の可能性
 これまでメディア等では、同居家族への調理を訪問介護と組み合わせて提供する、デイサービスの利用者に買い物の機会を提供する、といったものが「混合介護」の想定例として取り上げられてきた。これらはもちろん必要だが、いずれも介護事業者による生活サービスの範疇を超えない。保険の内か外かといった視点を捨てて高齢者の生活に素直に着目すれば、必要なサービスはもっと幅広いものになる。
 例えば、移動支援、健康管理や療養・服薬支援、外食に始まり、タブレットやIoTツールの利用、趣味・スポーツ、財産や契約の管理、さらには学習や就業・起業といったニーズまである。
 保険外サービスの成長を阻む課題は、認知度の低さに加え、サービスのプロモーションとデリバリーにかかるコストの高さにある。現役世代と比べて高齢者層は、家計消費の規模が小さいうえ、加齢や病気に伴う自らのニーズの変化を受け入れにくいため、新しい商品・サービスの利用までに時間がかかる。また、以前よりは改善されたとはいえオンラインで完結するサービスへの抵抗感が強いため、対面での顧客接点を残さざるを得ない。
 「混合介護」はこのような課題の解決策になり得る。つまり、保険内サービスの介護事業者がプロモーションとデリバリーを担うことで、サービス全体としてのコストを削減するのだ。
 このコスト効率化は、今のところ連携が進んでいない、いわゆる「介護」からは遠いサービス領域と介護事業者との組み合わせの方がより大きい効果が期待される。例えば、PCのサポートサービスやIoTを活用した健康管理・見守りといったサービスと訪問介護・訪問看護との組み合わせ、O2OにおけるエスクローサービスやMOOCとデイサービスとの組み合わせ、財産管理や金融・身元保証サービスとケアマネジメントとの組み合わせなどが考えられる。

介護事業者は高齢者の生活を支える「代理人」を目指せ
 介護事業者をチャネルにするといっても、寄って集って高齢者層に必要もないサービスを売り込むことがあってはならない。従って、チャネルとなる介護事業者が高齢者の視点に立ち、自立支援のためのケアという専門領域を軸に、高齢者の生活を支える「代理人」となることが必要だ。
 介護事業者は、「混合介護」をやれば新たな売り上げが増えるといった安易な発想ではなく、真に高齢者のニーズを汲んで必要なサービスを考え、そのうえで異業種との連携を実現できるか、本気度が試されている。
 また、政策的にも介護保険分野だけで捉えるのではなく、地域に暮らす高齢消費者の生活サービスをどう作り上げていくかという視点で取り組むことが求められる。


※執筆者の個人的意見であり、日本総研の公式見解を示すものではありません
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