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日タイ修好130周年に寄せて(2)
「タイのR&D(研究開発)強化の取り組み」

2017年09月26日 中村恭一郎


 今回は、日本とタイの新しいパートナー関係発展のもう一つのきっかけとなる、タイのR&D(研究・開発)強化の取り組みをご紹介します。

 前回、タイに進出する日本企業は5,000社を超えており、両国の関係は製造業を機軸に発展してきたことに触れました。ASEANでの中核的な製造工場をタイに設けている日本企業は多くあり、当初は日本など先進国への輸出拠点として、その後はASEAN周辺国への輸出拠点として、大きな役割を果たしてきました。

 一方、2015年のASEAN経済共同体(AEC)発足に見られるように、ASEAN全体が成長していく中で、タイ周辺国のベトナムやミャンマーに製造工場を設ける動きは一層活発化しています。企業の製造拠点国となることで経済成長を遂げたタイは、今後、新たに経済成長の基盤となり、投資や企業立地を促すテーマを打ち立てる必要があるのです。その一つとして期待されているのが、R&Dの強化です。

 2016年夏、タイ政府は今後20年間でR&Dへの支出をGDP対比4%に引き上げていく方針を表明しました。現状を見ると、2016年のR&D支出はGDP対比で0.5%にとどまっており、世界平均が2%を超えるとされる中で、タイは大きく後れを取っていると言えます。また、今後タイがいわゆる「中所得国の罠」に陥ってしまうのではないかという危機感が高まっており、技術革新や産業の高度化、それを支える高度人材(研究者や高度な知見を持つエンジニアなど)の育成が急務という認識も広まっています。タイ政府でR&Dを所管する科学技術省の大臣も、「タイが中所得国の罠を回避できるか、重要な岐路に立っている」と述べています。

 大方針が示された2016年に対し、2017年に入ってからはさまざまな具体的施策が矢継ぎ早に施行されています。2月には、R&Dに取り組む企業の法人税を最長で13年間(一部の政府認定事業は15年間)免除すること等を含む「改正投資奨励法」が施行されました。また、「国家競争力強化法」が同時に施行され、産業高度化に重要なターゲット産業(ロボット産業、航空・ロジスティック産業など政府が定めた10産業)や民間企業のR&Dを支援するために、100億バーツ(約300億円)の基金が設立されました。7月には、R&Dを支える高度人材のデータベース化や企業への紹介を行う“Strategic Talent Center (STC) ”が政府により設立されました。8月末には、R&Dを担当する新しい行政機関(省)の設立検討が発表されるに至っています。

 タイは、ASEANの中長期的な経済成長を見据え、ASEANのR&D拠点国として成長することに活路を見いだそうとしています。ASEANの経済成長が進めば、各国で個人の趣味や嗜好に合わせた新しい製品、サービスが求められるようになります。ASEAN市場におけるR&Dの重要性は、今後、どんどん増していきます。そうなった際に、R&Dを日本で行うのか、タイで行うのか、これは企業にとって重要なテーマです。私は、タイがR&D強化に取り組むことにより、日本企業から見たタイの位置づけも多様化が進み、日本とタイの新しいパートナー関係発展を促していくものになると考えています。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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