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アジア・マンスリー 2017年5月号

【トピックス】
東南アジアにおけるスタートアップとの連携

2017年04月19日 岩崎薫里


日本企業が東南アジアで現地化・デジタル対応を進めながら市場開拓を円滑に行っていくための一つの戦略と考えられるのが、近年、台頭している現地スタートアップとの連携である

■市場開拓における現地化・デジタル対応の重要性の高まり
日本企業は長らく東南アジアにおいてビジネスの優位性を保ってきた。しかし、近年、同地域が成長力の高い市場として世界的に注目を集めるなか、欧米、さらには中国・韓国の企業もこの地域への進出を本格化させている。このため、地場企業が着々と育っていることと相まって、日本企業の相対的なプレゼンスが低下し、日本製品・日本ブランドというだけで売れる時代では最早なくなりつつある。そうしたなかで日本企業が市場開拓を行っていくには、現地に入り込み、ニーズをきめ細かく吸い取ってビジネスにつなげていくこと、すなわち現地化がこれまで以上に重要になる。

一方、東南アジアでは現在、インターネットとスマートフォンが急速に普及するなど、デジタル化が進展している。もっとも、例えば多くの国ではソーシャル・メディアの利用時間は先進国を上回るが電子決済の普及率は低いなど、個別分野ごとのバラツキが大きい。また、デジタル化の進展のわりに諸インフラが依然として未整備であるなど、デジタルとそれ以外の分野が先進国のように足並みをそろえて発展しているわけではない。このように、いわば「新興国型のデジタル化」が進む状況下、日本企業の対応も日本国内と同じでは通用せず、現地の事情に即したものが求められ、ここでも現地化が重要になる。

■対応策としてのスタートアップとの連携
こうした難しい局面において日本企業が東南アジア市場の開拓に挑むうえで考えられる一つの戦略が、現地のスタートアップ(ベンチャー企業)との連携である。

企業がスタートアップと連携する目的は、スタートアップが生み出したイノベーション、およびそれを創出した人材にアクセスすることである。それによって、新しい市場に参入したり、自社の研究開発を補完したりするなどが期待されている。世界の主要国の大企業にスタートアップとの連携のメリットを尋ねたアンケート調査(アクセンチュア実施)でも、「特定のスキル・人材へのアクセス」「新市場への参入」「社内R&D投資に対するリターンの向上」との回答が上位を占めた(右図)。
スタートアップとの連携方法としては、スタートアップの商品の単発購入といった軽いものから、サプライヤーに迎え入れて商品を継続的に購入する、共同で開発やマーケティングを行う、さらにはスタートアップを買収するなど、コミットメントの度合いに応じて各種存在する。

現在、東南アジアではスタートアップが相次いで立ち上がり、最新のデジタル技術を駆使しつつ、現地の実情に寄り添うビジネスを展開している。日本企業は彼らと連携し、彼らのイノベーションを取り込むことで、現地化・デジタル対応に関する情報・ノウハウのハンディキャップを補ったり、さまざまなビジネス上の実験を容易に行ったりすることが可能になる。それが東南アジアで日本企業が市場開拓を行ううえでの武器となり、ひいては日本企業のプレゼンスの維持・向上につながっていくことが期待される。

例えば、日本のファッション・ブランドがインドネシアに進出するに当たり、同国で電子商取引(EC)サイトを運営するスタートアップと連携し、そこに出店することが考えられる。それによって、広大な国土を持つ同国の消費者に広くアプローチすることが可能になるうえ、自社商品の販売状況の分析や他社商品との比較を通じてインドネシア人の好みや受け入れられる価格帯を探るなど、さまざまな実験の機会を得られる。あるいは、日本の化粧品メーカーがタイでの販売促進を狙う場合、ソーシャル・メディアを活用したマーケティングを行うスタートアップと連携することで、ターゲットとする層に対してマス広告の利用に比べてより直接的・効果的にアプローチすることが期待できる。

■日本人スタートアップとの連携という選択肢
日本企業の間では近年、オープン・イノベーションの重要性が認識され、その一環としてスタートアップと連携する動きが大手を中心にみられるようになっている。しかし、海外、ましてや新興国となると実施例はいまだ少ないのが実情である。連携に不慣れな日本企業にとっては、まずは近年増えつつある、日本人が東南アジアで立ち上げたスタートアップ(日本人スタートアップ)と連携するという選択肢が考えられる。その利点としては、①トップが日本語を話し日本人の思考パターンを理解するため意思疎通がしやすい、②自社商品が現地に受け入れられるためのきめ細かい支援を受けることができる、③日本企業が理解しづらい現地の商習慣やそれにかかわる注意点などを説明してもらえる、などが挙げられる。日本人スタートアップを通じて現地化への足掛かりを得た後に、連携先の候補を現地人材によるスタートアップへ広げていく、というのが一つの有効な方策となろう。
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