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介護人材の需給推計に関する調査研究

2017年04月10日 沢村香苗齊木大


*本事業は、平成28年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業として実施したものです。

1.事業の目的
 今後高齢化のさらなる進展が見込まれる一方、人口減少とあいまって労働力人口の減少が進むため、現状のままで推移した場合、高齢者の生活を支える担い手が不足することが見込まれる。介護人材の需給ギャップの解消に向けた具体的な取り組みに関しては、2025年に向けた総合的な確保方策の策定の一環として、介護人材需給推計の継続的な実施が提言されている。本調査においては、介護人材需給推計を利用して都道府県担当者が適切なPDCAサイクルを運用することに向けた課題・問題点の整理および課題解消の方策を整理することを目的とした。

2.事業の内容
(1) 介護人材の需給推計に関する都道府県の現状把握
 介護人材の需給推計の実態を整理するために、前回推計の状況および次期推計に関する考え方等について、都道府県担当者へのヒアリング・アンケート調査による実態把握を実施した。調査では、以下の項目を把握した上で、第7期推計に対する期待についても尋ねた。ヒアリング調査は、アンケート調査に先立って実施し、アンケート調査を設計する際に参考として活用した。

(2) 課題・問題点の整理、仮説検討
 現状の需給推計における実態把握を踏まえ、需給推計における課題・問題点を整理した上で、今後の需給推計のあるべき方向性に関する仮説の検討を実施した

(3) データ分析の試行
 検討した仮説についてその有効性・有用性について確認・検討するために、需給推計の際に活用すべきと想定した詳細データの試行的な分析を実施した。事業者、従事者の状況を従来の調査の枠組みよりも詳細に把握・検討を行った。事業者からの収集データについては、広島県にて実施した調査結果について提供いただき、集計・分析した。従事者に関するデータは、本調査研究独自にインターネットによるアンケートを実施し、集計・分析を行った。

(4) あるべき姿の検討・抽出
 (1)~(3)における検討を踏まえ、今後の需給推計および推計結果の活用方法についてのあるべき姿について検討を行った。検討は主に以下の点を論点とした実施した

(5) 検討委員会における検討
 (1)~(4)の検討を円滑かつ効果的なものとするために、有識者および都道府県の実務担当者からなる検討委員会を設置し、各論点について検討を行った。

①委員名簿  (五十音順、敬称略)
青木 孝夫  広島県健康福祉局 医療介護人材課 参事
加藤 秀行  埼玉県福祉部高齢者福祉課 介護人材担当 主幹
川越 雅弘  国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部 部長
小泉 孝夫  東京都福祉保健局 高齢社会対策部介護保険課 統括課長代理
藤田 育   京都府健康福祉部介護・地域福祉課 福祉人材・企画担当 副課長(総括)
堀田 聰子  国際医療大学大学院 医療福祉経営専攻 医療福祉学分野 教授

②検討委員会の開催
第1回(10月3日)検討の方向性及び進め方、都道府県における現状の取組みおよび課題
第2回(12月8日)検討推進のための調査実施について
第3回(3月28日)報告書の承認

3.事業の成果
(1) 介護人材の需給推計に関する都道府県の現状
 ヒアリングの結果、①推計の結果を施策検討にあまり活用できていない、②施策の効果が不明瞭であり、推計時に考慮が難しい、③地域特性をどの程度考慮すべきかの判断がつきにくい、④新たな施策・取組の需給推計への反映方法が見えにくいという課題が明らかになった。
 前回の推計結果は6割の都道府県が課題抽出に活用したと回答したが、活用していない都道府県からはヒアリングと同様の課題が指摘された。また推計に利用するデータ、施策立案・効果検証に利用するデータとしては、主に市区町村別のものが必要であるという意見が多かった。

(2) 課題・問題点の整理、仮説の提示
 介護人材需給推計は、本来的に介護人材確保策の検討に活用されることを狙いとしている。しかし、本調査研究で実施した都道府県向けアンケート調査およびヒアリング調査結果を踏まえると、第6期介護保険事業計画において介護人材需給推計結果を施策の検討に反映した都道府県は一部に限られる。
 推計結果を施策検討に活用しなかった理由は、大きく「必要性がない」、「施策検討のためのセグメントデータがない」ことに分けられる。そのほか、計画策定時期に推計結果が出ていないことも活用しにくい一因である。また、介護人材需給に関する施策検討のプロセスが確立されておらず、それゆえ介護人材需給推計の結果を課題抽出や施策検討に反映することが出来ていないという問題点もある。
 推計精度については、前提となる統計データのばらつきや自治体における要介護高齢者数の推計方法のばらつき、基礎的な統計データが不十分でセグメント化した課題抽出(例えば、サービス種別、年代別、職種別、雇用形態別等での人材需給に関する課題の抽出)ができないことが問題点として指摘できる。
 施策の効果検証については、施策効果のパラメータを設定するための事例の蓄積が今後求められる。


(3)あるべき姿
 介護人材需給に関わる施策は、介護人材の確保(供給)と介護サービスニーズ(需要)の両面にまたがり、かつ都道府県内の地域差にも考慮が必要と、かなり広い視野を持って検討する必要がある。介護人材需給施策を考える際、以下に示す基本的な考え方を踏まえることで、広い範囲の中で効率的・効果的に検討を進めることができると考えられる。
 ①地域ごとに分析する、②現在と将来の介護人材需給ギャップを把握する、③セグメントデータを使い課題を抽出する、④まず介護人材の需要を検証し、次いで供給のための施策を検討する、⑤自立支援のためのケアの実践とそれを実現する介護人材の成長・活躍を支援する。
 介護人材需給に関する取り組みは他の介護保険事業における施策分野以上に不確定要素が大きく、外部環境の変化に伴う影響も大きく受ける。このような分野で効果的に施策を実施するには、確定的な計画を実行するアプローチというよりも、まずは大きく方向性を見定めて施策を実施しながら改善しつつ進めていく「PDCAサイクル」を回すことが重要となる。

(4) あるべき姿の実現に向けた提案
 あるべき姿を実現していくうえでの課題解決のための提案は以下のとおりである。
 ① 基礎的な統計データの整備:標準調査項目(標準調査票)」を策定、基金事業として都道府県、あるいは
   国が全国調査として実施し、そのデータを集約・分析するといった方法が考えられる。そのうえでも、国
   と都道府県、市町村の連携のあり方、役割分担について改めて整理することが重要である。
 ② 自治体や介護保険事業担当部署を巻き込んだ政策形成プロセスの運用:既に多くの都道府県では介護人材
   確保に関する協議会を設置しているため、会議体としてはこの枠組みが活用できる。
 ③ 介護人材需給に関わる主な施策・事業のモニタリング(データ蓄積):まずは現在基金事業で実施されて
   いる介護人材需給に関わる主な施策・事業を体系化したうえで、これらの体系ごとにモニタリング・評価
   で把握すべき指標(データ)の標準を示し、これを各都道府県が収集、国に報告するプロセスとする。
   主だった施策については個々の施策・事業から介護人材需給全体の効果(=アウトカム)への波及過程を
   表現した「インパクトマップ」を作成する。他の施策・事業についても、個々の施策・事業の結果と「ア
   ウトカム」を結びつけるマップを作成し、これに関連するデータを蓄積する。
 ④ 介護人材需給に関わる施策・事業の実施とその効果の検証:介護人材需給に関わる施策・事業のモニタリ
   ングや評価に係る様式を定め、複数の地域間で相互に比較ができるようにすることが必要である。複数の
   都道府県間で施策の効果を比較するためには、基金を活用した事業については実施内容とその成果のデー
   タを国に集約したうえで分析し、事業・施策ごとの効果を分析して発信することが有効である。

※詳細につきましては、下記の報告書本文をご参照ください。
介護人材の需給推計に関する調査研究 報告書(PDF:2153KB)


本件に関するお問い合わせ
創発戦略センター シニアマネジャー 齊木 大
TEL: 03-6833-5204   E-mail: saiki.dai@jri.co.jp

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