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介護サービス計画書の様式等の利用実態に関する調査研究事業

2017年04月10日 辻本 まりえ、齊木大


*本事業は、平成28年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業として実施したものです。

1.事業の目的
 本調査研究事業では、介護支援専門員が取り扱う文書量の実態の把握および、指定申請時、特定事業所加算請求時に提出を求める文書量に関する自治体間の差異等の実態を把握し、文書量削減余地の検討を行うことを目的とした。

2.事業の内容
(1) 仮説の構築
 介護支援専門員の生産性の向上(業務の効率化)を実現するためには、業務にかかる時間の削減、業務にかかる心理的負担の削減、介護支援専門員の業務遂行スキルの向上などさまざまなアプローチが考えられるが、本調査研究事業では、「一億総活躍プラン」にも掲げられている介護支援専門員が取り扱う帳票等の文書量の半減に向けた検討に絞って事業を行った。
先行研究やケアマネジメントの実践現場の聞き取りを踏まえると、介護支援専門員が取り扱う帳票等の文書量が多い要因のうち最も影響が大きいものとして、以下の2点が挙げられた。
 ① 電子に加えて紙でも文書の保管を行っているのではないか。
 ② 特定の地域や特定の事業者では、他の地域や事業者において作成していない書類を独自で作成、保存しているのではないか。
 本調査研究では、これら2つを調査仮説として位置づけ、その実態の把握と、これら課題の実態が把握された場合、その解決に向けた方策を検討するために、個別事業所および自治体担当者に対し「介護支援専門員が取り扱う文書量に関する実態調査(質問紙調査)」を実施した。

(2) 個別事業所向けアンケート調査
調査期間 平成28年11月18日(金)~平成29年1月31日(火)
調査方法 質問紙調査(全国の居宅介護支援事業所から無作為に抽出した1,405事業所に郵送送付、郵送回答)
対象   居宅介護支援事業所の管理者および介護支援専門員
配布数  調査票1(介護支援専門員向け):2,810件
     調査票2(介護支援専門員向け):2,810件
     調査票3(事業所管理者向け):1,405件
回収数  調査票1 958票(回収率34.0%)
     調査票2 958票(回収率34.0%)
     調査票3 552票(回収率39.3%)

(3)自治体向けアンケート調査
調査期間 平成29年1月20日(金)~ 2月10日(金)
調査方法 質問紙調査(全国の指定権者(114自治体)の担当者に郵送送付、郵送回答)
対象   全国の指定都市中核市を含む114自治体の「事業者指定・指導担当」の担当者
配布数  114件
回収数  106票(回収率93.0%)

3.事業の成果
(1) 介護支援専門員が取り扱う文書量に関する実態調査の結果
 介護支援専門員が取り扱う文書のうちいくつかの種類の文書については、文書の保管の際に紙と電子の両方で重複して保管している事業所が多いことが明らかとなった。具体的には、紙と電子での重複保管している事業所が多い文書は「居宅サービス計画 第6表(サービス利用票)」(事業所全体の84.5%、以下同じ)、「居宅サービス計画 第7表(サービス利用票別表)」(84.1%)である。
 また、文書作成の負担感は、文書の量(ページ数)だけではなく、文書の作成・更新頻度や転記の手間などにも影響を受けていることが明らかとなった。具体的には、居宅介護支援事業所が文書の作成について「負担感がある」と回答した割合が大きく、かつ文書の作成・更新頻度も大きい文書について見ると、「アセスメントシート」(45.0%)、「居宅サービス計画第5表」(32.4%)といったものが挙げられる。一方、同程度の作成・更新頻度であっても「要介護認定等開示申請書」や「作成依頼(変更)届出書」については、「負担感がある」と回答した事業所の割合がそれぞれ8.6%、7.7%であった。この違いは、文書の様式や記載すべき内容が定まっているかどうかが要因になっていると考えられる。
 さらに、指定申請時や加算算定時の提出文書に関して、求める文書の種類や要件に関する自治体間の差異があることも明らかとなった。具体的には、「事業所(建物)の登記事項全部説明書(の写)」や「研修実施記録書」という書類については、「提出を求める」自治体の割合が、それぞれ49.1%、31.1%となっており、地域による差が大きいことが分かる。

(2) 実態調査を踏まえた現状の課題
 実態調査の結果を踏まえると、解決すべき現状の課題は、紙と電子媒体の両方での重複保管を行っていること、また、新規指定申請時や特定事業所加算算定時に提出を求める文書の種類や要件に関して、自治体間の差異があることである。
実態調査の結果より、介護支援専門員が取り扱う文書について、紙のみでの保管を行っている文書、紙と電子媒体の両方での保管を行っている文書があることが明らかとなった。紙のみでの保管を行っている文書については、保管自体の必要性や、電子媒体での保管へ移行しない要因を明らかにすることが必要である。また、紙と電子媒体の両方での保管を行っている文書については、紙と電子媒体の両方で保管している要因等を詳細に分析することが必要である。
 一方で、文書作成の負担感は、当該文書の作成頻度とその文書のページ数にも依存することから、作成頻度が多くページ数も多い文書について、削減の検討を行うことは文書作成の負担感の削減にもつながると考えられる。文書作成の負担感が大きく、作成頻度が多い文書について、文書量の削減余地が最も大きいと考える。
 また、新規指定申請時や特定事業所加算算定時に提出を求める文書の自治体間のばらつきに関して、ばらつきが生じる要因を詳細に明らかにする必要がある。また、提出を求めている文書の種類や要件差異が、指導・監査においてどのような影響を与えているのかについても調査する必要がある。

(3) 今後の検討の可能性
 「紙のみ」で保管が多い文書は、原本文書の紙媒体での保管を必須としないことにより文書量の削減が期待できる。例えば、当該文書の電子媒体化(電子印、電子署名による運用を含む)や、電子媒体での保管等について検討する余地がある。
 「紙と電子媒体の両方」で重複保管を行っている文書は、「電子媒体のみ」での保管へ移行した場合に、大幅な文書量の削減が期待できる。今後、「紙と電子媒体を両方」の保存している要因を分析した上で、居宅介護支援事業所における事業所運営業務の効率化等を検討する余地がある。
 作成頻度が高い文書については、文書作成の負担感を軽減することで業務の効率化が期待できる。特に、文書作成の負担軽減のためには、自由記述となっている項目の明示を検討する余地がある。
新規指定申請や特定事業所加算の算定に係る提出文書については、今後はばらつきが生じている要因を分析し、国による提出書類の参考例の作成等も含めて検討する余地がある。

※詳細につきましては、下記の報告書本文をご参照ください。
介護サービス計画書の様式等の利用実態に関する調査研究事業 報告書(PDF:4869KB)


本件に関するお問い合わせ
創発戦略センター シニアマネジャー 齊木 大
TEL: 03-6833-5204   E-mail: saiki.dai@jri.co.jp
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