ホーム> 経営コラム・レポート> オピニオン> 【次世代農業】農業ビジネスを成功に導く10のヒント~有望な新規事業の種はどこに埋まっているのか?~<br>第9回 ヒント(8)若手農業生産者から学ぶIoT、ロボット技術の実現可能性(前編)

直前のページへ戻る
オピニオン

【次世代農業】
農業ビジネスを成功に導く10のヒント~有望な新規事業の種はどこに埋まっているのか?~
第9回 ヒント(8)若手農業生産者から学ぶIoT、ロボット技術の実現可能性(前編)

2017年02月14日 清水久美子


 弊社では先日、「IoTが拓く次世代農業~アグリカルチャー4.0の時代~」と題したシンポジウムを開催しました。500名を超える申し込みがあり、熱気あふれる会となりました。

 以前から、農業IoTの検討の際には、「農業生産者の方が本当に必要としていることが知りたい」という声を耳にしていました。それに応えるべく、パネルディスカッションでは、IoTやロボット等の技術を使って働き方の改善を目指しておられる若手農業生産者2名をお招きし、現在直面している課題や、新しい技術への率直なご意見を伺いました。農林水産省の担当官、ロボティクスの専門家にもご参加いただき、IoTやロボット技術導入の実現可能性について議論を深めることができました。ここでは何回かに分けてパネルディスカッションから得られた知見をご紹介していきたいと思います。今回は、静岡県で柑橘(主にミカン)を栽培されている、米澤果樹園の米澤様のお話に焦点を当てます。果樹栽培は水田作や畑作と比較し、本格的な機械化はこれからの分野です。

 農業における自動化技術には収穫にフォーカスしたものが数多くあります。年間通して最も作業が集中するのは収穫期だからです。米澤様からは、その収穫に至るまでの防除や摘果といった作業においてもそれに準ずる時間が費やされおり、IoTやロボットのニーズがあることをご紹介いただきました。それぞれの適用可能性について補足したいと思います。

 防除は必要となる回数が多いことが特徴です。さらに、ミカンの圃場は平地、段々畑・傾斜地にわたって点在しており、1農家が所有する圃場間の距離が離れていることもめずらしくありません。圃場が点在していると、同じ面積でも必要労働時間は長くなります。米澤様からは効率化の一案としてドローン等を使った状況監視を挙げられました。「実導入には、操作の自動化を組み込んだサービスがあると良い」というご意見も出てきました。モニタリング性能が優れていても、操作に時間がかかってしまうと省力化にはつながりません。これについて弊社三輪より、操作の自動化以外に加えて、その地区(例えば単協単位)のドローン監視を一括して代行するサービスの可能性についてアイディアを述べました。

 摘果は、優良果の選別に熟練した技能が求められます。そのため、若手には品質向上を目指す上で高いハードルとなってしまっています。米澤様は、「摘果すべき実を教えてくれるARグラス等の開発が進めば、誰でも作業できるようになる」と期待を述べられました。これについて、ロボティクスの専門家である慶應義塾大学理工学部の高橋准教授からは「その作業に何が必要なのか、まず現場に行って、データを集めたい」というご意見がありました。他分野で実績のあるロボットについても、必ず同様のプロセスが必要になるそうです。

 農業生産者が本当に使えるIoTやロボット技術の開発には、農業生産者と技術者のコミュニケーションの場を作ることがその第一歩になることは間違いありません。国内のスマート農業の事例を数多く見てこられた農林水産省大臣官房研究調整官の安岡様も、「両者をつなぐコーディネーターの役割が重要だ」と述べられました。そのコーディネーターには、単純に二者間を引き合わせるだけでなく、その先の発展の仕組みを作っていく役割が重要になっていくと考えます。この話は次回、北海道岩見沢市で水田作・畑作・野菜作をされている、濱本農場の濱本様のお話を紹介しながら続けたいと思います。

この連載のバックナンバーはこちらよりご覧いただけます。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。