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オピニオン

CSRを巡る動き:ビッグデータ活用とインパクト・インベストメントの拡大

2017年02月01日 ESGリサーチセンター


 最近、アメリカの大手金融機関が、特定の社会課題解決に貢献する先進国上場企業の株式や債券に投資する、インパクト・インベストメント型公募投資信託の販売を開始しました。インパクト・インベストメントとは、投資収益だけでなく社会的なインパクトの創出も目的とする投資戦略を指します。その背景には、資産運用を通じて投資収益の追求と社会貢献を両立させたいという投資家の存在があるようです。

 インパクト・インベストメントでは、社会に悪影響を与える企業を投資対象から排除するネガティブスクリーニングや、企業による環境・社会・ガバナンスに関する取組みを総体として評価するESG投資とも異なり、ある特定の社会的課題に対する効果、つまり「社会的インパクト」の評価に基づいて投融資の対象企業を選定します。

 ただ、社会的インパクトを評価する方法論はまだ確立されていません。既存の他事例でも、方法論を模索しながら、未上場企業を中心に投資対象の社会的インパクトを手間ひまかけて評価するのがせいぜいでした。今回、この大手金融機関がインパクト・インベストメントを導入する際の課題も、社会的インパクト評価の方法論開発と効率化だったようです。

 今回、注目されるのは、ビッグデータの自動解析システムを活用することで、社会的インパクト評価の方法論開発と効率化を実現した点です。四千社近くの投資候補企業を起点に、それらの企業に関するビッグデータを精査して、投資収益を予測する指標(相対価値や企業収益力など)のほか、環境や健康など特定の社会課題解決への貢献度を予測する指標(ある難病の治療法開発によって助かる患者数やある環境問題を改善する革新的な技術の有無など)を算出し、各銘柄の投資魅力度を導き出したと説明されています。この結果、低コスト・低リスクの投資信託を実現し、一部の機関投資家や超富裕層だけでなく、より広範な個人投資家にインパクト・インベストメントが普及する可能性が生まれたといえるでしょう。今後はさらに、未上場企業に対する社会的インパクトを評価する人材の確保、方法論の確立、関連データの質やアクセスの向上などが焦点になるでしょう。

 翻って日本においても、昨年、資金提供者・事業者・中間支援組織・行政が社会的インパクト評価の情報を集約し共有するプラットフォームとして「社会的インパクト評価イニシアチブ」が立ち上がりました。確定拠出年金のメニューにインパクト・インベストメント・ファンドを組み込むなど、わが国でも、こうした金融商品の普及の可能性が展望されるところです。日本企業にも、自らの製品・サービスやビジネスモデルが、特定の社会的課題に対して効果的であるかを積極的に発信していく姿勢が、より一層求められると考えられます。