コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

オピニオン

【シニア】
第15回 ギャップシニアと東京オリンピック

2016年11月08日 岡元真希子


 リオデジャネイロでのオリンピック・パラリンピックが幕を下ろし、いよいよ4年後に迫った東京オリンピックに向けた準備が着々と進められつつある。2013年に東京開催が決まったときは、7年後の話でだいぶ先のことのように感じたが、もう来年にも2020年が来てしまうのではないかという気がする。

 高齢者に、これから先の話をするのは難しい。ギャップシニアに対して「今のお暮らしではさほど困っていることはないかもしれませんが、10年後の自分を思い浮かべて、困りそうなことや心配なことはありませんか」という質問をしてみると、「10年後は生きてないわ」という答えが返ってくることが多い。ギャップシニアが最も多いのは75~84歳の層なので、仮に80歳を例に挙げると、80歳の女性の平均余命は11.79年である (平成27年簡易生命表による)。よく報道される平均寿命が女性の場合は87.05歳なので、それが印象に残っていて「あと7年」と考えてしまうのかもしれないが、平均寿命とは今年0歳の赤ちゃんの平均余命なので、現在すでに80歳の女性のものとは異なる。つまり、現在80歳の女性の場合、「10年後は生きていない」という発言とはうらはらに、半数以上が90歳を超えて生きている確率が高い。
 齢を重ねて、介護が必要になったり、認知機能が低下したりすることなどは、できれば直視したくないため、はっきりとしたイメージを持つことを避けてしまうという面はあるだろう。しかし、少しずつできなくなってきていることや、まだこれからもやりたいことなどを明らかにすることで、生活上の問題の解決手段を探す手がかりになり、生活の質を上げることができる。人の助けを借りることによって愛着のある自宅に住み続けることが可能になったり、道具やサービスを使うことによって不便さが解消したり、張り合いがある暮らしをすることによって要介護になることを先延ばししたりすることにつながる。要介護状態にまでなれば、介護保険のケアマネジャーがアセスメントし、ケアプランを立ててサービス利用につなげていくが、それまでの間、現状認識と解決手段の探索を先延ばしにする必要はまったくない。
 ギャップシニアコンソーシアムの活動拠点では、そのような現状認識と、解決手段に関する情報提供をすることを目的として、日常的な接点の構築を進めている。現状認識や提案にあたっては、タイミングがとても重要である。ギャップシニアには、季節が良くて、以前のように気力が湧いてくるときもあれば、夏の暑さがそれまで以上に身体にこたえたり、冬にひいた風邪が長引いてなかなか体調が回復しなかったりするなど、沈みがちなときもある。オリンピックを観戦して「4年後まで元気でいなきゃ!」と意欲がわいているときもあれば、兄弟が入院するなどして心細くなっているときもある。
 また、筆者が初めて訪れたときに、日常の生活における困りごとの相談をするギャップシニアもいれば、顔なじみの関係ができてから、身体の不調やそれを受け入れられないという心情について話し始めるギャップシニアもいる。筆者自身は、緩やかな接点を維持していくことで、相談や提案のタイミングを見定めることが可能になると考えている。

 1964年の東京オリンピックのときに20代だったギャップシニアにとって、2回目の東京オリンピックはとても楽しみな目標のひとつである場合が多い。それを励みに、4年後までに体力・体調を維持するためには食事・運動など日常生活における配慮も必要になるだろう。体調がよいときには前向きな提案をし、沈みがちなときには商品やサービスの助けを借りて、自分らしい暮らしの実現を呼びかけていく。そんな支援を続けていきたい。

この連載のバックナンバーはこちらよりご覧いただけます。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ