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「コーポレートガバナンス・コード対応の課題と方針の実態調査」(前編)

2016年04月20日 野尻剛


【調査の目的】
 株式会社日本総合研究所は、2015年6月より上場企業に義務付けられたコーポレートガバナンス・コードの初年度対応状況について、東証一部・二部上場企業を対象としたアンケート調査を2016年1~2月に実施しました。
 コーポレートガバナンス・コードには、基本原則・原則・補充原則を合わせて73の原則があります。東証一部・二部上場企業の場合、全73原則について「コンプライ・オア・エクスプレイン(Comply or Explain)」(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)が求められます。その内容は広範多岐にわたり、上場企業にとっては相応の負担が生じます。そこで、初年度対応を通じてどのような課題を感じられているかを明らかにし、今後のあるべき対応方針について示唆を得ることを本調査の目的としています。

【アンケート調査の概要】
調査対象 : 東証一部・二部上場企業2,416社
回収状況 : 312社から回答(回収率12.9%)
調査方法 : 郵送調査
調査期間 : 2016年1~2月

【主な調査結果】
コーポレートガバナンス・コードに前向きに取り組むも、具体的成果を得るのは今後の課題
 コーポレートガバナンス・コードの初年度を終えて、どのような感想を持ったかの質問については、「自社のコーポレートガバナンスのあり方を再検討する良い契機となった」が69.9%と最も高く、次に「Comply(実施)としている項目についても、今後より一層の改善・強化が必要と感じた」が60.3%と、前向きに取り組まれている意見が上位を占めています(図表1)。
 その一方で、「実際に取組みの追加や見直しを行うことで、ガバナンス強化に繋がる成果があった」は26.6%に留まっており、成果を得るまでには至っていない企業が多いことが分かります(図表1)。
 

図表1 初年度を終えての感想(N=312、複数選択可)


中期経営計画を公表する企業が多いが、株主に対するコミットメントは不十分
 中期経営計画を策定・公表しているかについては、「策定・公表している」が73.0%と多数を占めました(図表2)。
 しかし、中期経営計画も株主に対するコミットメントの1つとして認識することが求められている点については、自社の状況に何らかの課題を感じている企業が79.2%に上りました(図表3)。中期経営計画を策定・公表している企業であっても、株主に対するコミットメントとしては不十分と感じているケースが多いことが分かります。
 これは先に挙げた「Comply(実施)としている項目においても、今後より一層の改善・強化が必要と感じた」の具体例の1つと考えられ、今後取り組むべき課題としても、「株主に対するコミットメントを意識した経営戦略や経営計画の策定・公表」が47.1%と、取締役会の活性化等に次いで多く挙げられています(図表4)。

図表2 中期経営計画の策定・公表状況(N=312)


図表3 中期経営計画も株主に対するコミットメントであることへの課題認識(N=312)

図表4 持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために今後取り組むべき課題(N=312、複数選択可)

ROEは一定の浸透を示すも運用面で課題があり、特に経営陣の意識改革がポイント
 中期経営計画を策定・公表している企業に対し、数値目標として策定・公表している指標を聞いたところ、売上高(77.3%)や利益額(72.7%)といったオーソドックスな指標に続いて、ROE(自己資本利益率)が44.5%と高く、ROA(総資産営業利益率)の13.7%と合わせると、資本収益性を示す指標を策定・公表している企業が、半数程度存在することが分かります(図表5)。
 ただし、ROE・ROAの社内管理指標への展開状況としては、「社内は売上高や利益等で管理しており、公表しているROE・ROAとの数値的な連動はとれていない」が61.2%と高く、経済産業省の伊藤レポートが指摘している「ダブルスタンダード経営(資本市場や投資家との対話と自社内の経営指標が違う)」が浮き彫りになりました(図表6)。
 また、ROE・ROAを管理指標として展開する上での課題、うまく機能するためのポイントについては、「取締役や経営陣幹部の意識改革」が34.9%、次いで「現業部門の理解と協力」が26.0%と意識に関する課題が多く挙がり、テクニカルな課題である「事業単位でのB/S(貸借対照表)の導入」(17.0%)や「分社化、社内カンパニー、事業部制等の組織体制整備」(7.7%)を抑えました。(図表7)。

図表5 数値目標として策定・公表している指標(N=227、複数回答可)

図表6 ROE・ROAの管理指標への展開状況(N=103、複数回答可))


図表7 ROE・ROAを管理指標に展開する上での課題、機能するためのポイント(N=312、複数回答可))



※「コーポレートガバナンス・コード対応の課題と方針の実態調査」のアンケート調査票は、こちらからダウンロードできます。
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