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Business & Economic Review 2012年7月号

【特集 アジアの銀行の発展に向けて】
ASEAN+3地域の銀行部門の現状と課題

2012年06月25日 藤田哲雄


要約

  1. ASEAN +3地域においては、銀行が金融仲介の中心的役割を果たしている。金融仲介の多くが銀行セクターを通じて行われている。これは、金融仲介機能を伝統的に銀行が担ってきたという歴史的な背景に加えて、資本市場が発展途上であることが理由である場合が多い。ASEANにおいて資本市場を利用できるのは、政府と一部の大企業である場合が一般的で、中小企業を含めた企業の多くは資金調達を銀行に依存している。


  2. ASEAN地域の国々のGDPは中国や日本に較べれば遥かに小さいため、それらの国の銀行は国内では大きなシェアを持っていても世界的に見れば小規模である。業態についても商業銀行が中心であるため、総合的に高度な金融手法を提供できる銀行は少ない。このように資金力や金融技術力で大きな格差が存在するため、多くの国では外資系銀行の参入および営業活動について多くの規制を設けている。


  3. ASEAN地域の国々では、銀行サービスが国民に広く普及している状況ではなく、まだ銀行サービスを利用していない人口や地域が相当残されていることが推定される。このようななか、金融サービスにアクセスできていない人々に金融サービスを提供する金融包摂(フィナンシャル・インクルージョン )プログラムが実行されている。


  4. アジアの銀行は健全性を保っており、2008年の世界金融危機でも直接大きな影響を受けることはなかった。アジア通貨危機の教訓から預金保険などセーフティネットの導入も進んでいる。加えて、決済システムについても処理能力の増強に加えて、RTGSの導入が進んでいる。したがって、アジア地域で銀行セクターの決済リスクから生じる銀行の連鎖的な破綻の可能性は比較的小さい。


  5. 世界金融危機でアジアの銀行が直接大きな影響を受けなかったことから、商業銀行モデルを再評価する動きもある。また、イスラム金融を従来のような欧米の金融サービス・商品をイスラム法に従って再構成してキャッチアップするという姿勢から、欧米の金融機関が提供していない独自のサービス・商品を開発しようとする動きもみられる。


  6. 今後、アジアの経済成長に伴い、膨大な人口の中間層が立ち上がってくるが、これらの中間層を金融的に支えることが持続的な成長のカギとなる。具体的には、中小企業金融と消費者信用を発展拡大させることが課題となる。個人や零細企業の信用情報インフラ、リスク管理体制、担保法制等債権保全のための制度的インフラ等、個々の銀行の努力だけでは克服できない問題も多く、政府と民間銀行が協力して解決に向けた努力を行うことが必要である。
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