コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

オピニオン

CSRを巡る動き:持続可能な開発目標(SDGs)と企業活動への影響

2016年06月01日 ESGリサーチセンター


 2016年は国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」が効力を持つ最初の年です。SDGsは、これまでの「ミレニアム開発目標(MDGs)」で積み残した課題に加え、国際社会の共通課題である貧困や環境など17の目標と169項目の達成基準が盛り込まれています(注1)。途上国の課題が中心だったMDGsに比べ、SDGsは先進国も途上国も対象なのが特徴です。

 こうした国際目標の設定が、企業活動にどのような影響があるか、機会とリスクの二つの側面から考えてみましょう。はじめに、機会の側面では、例えば省エネ技術、水処理技術、ICT等を用いた地球規模の課題解決に関連する製品・サービスを有する企業にとっては、大きな市場開拓のチャンスを意味します。また、世界の共通言語としてのSDGsを用いた国内外ステークホルダーとの関係強化などのメリットも考えられます。次に、リスクの側面では、企業活動で守られるべき人権、環境、労働、腐敗防止等の問題がSDGsの目標と深く関連しているため、これらの対応が不十分な企業にとっては、事業継続リスクにも成り得ます。機会とリスクのバランスをとり、企業活動への適合を進めることこそ、リスクマネジメントとしてのCSR活動であると同時に、自社事業を活かした社会課題の解決というCSVの実現と言えるでしょう。

 ではどのようにSDGsを企業活動と整合していけばよいのでしょうか。その1つの鍵となるのが、GRI、国連グローバルコンパクト、WBCSDが発表したSDGコンパスと呼ばれる指針です(注2)。SDGコンパスは、企業がSDGsと企業活動を照合し、SDGsへの貢献度を測定・管理するための指針を以下の5ステップ毎に提示しています。そして企業は自社が現在どのステップに位置し、それに応じた戦略を立てるための情報とツールをSDGコンパスから入手することができます。
 1) SDGsへの理解
 2) 優先課題の決定
 3) 目標の設定
 4) 経営との統合
 5) 報告とコミュニケーション

 2015年度、SDGs発表後に公開されたCSR報告書では、SDGsの目標と自社事業の対照表を公開する企業が見られました。加えて、近年国際的に進んでいる統合報告書の公開に関しても、SDGsは重要な評価指標の一つとして議論されています(注3)。これまでのCSR報告書では、GRIガイドラインやISO26000、国連グローバルコンパクト等を参照し、企業活動との対照表が作成されてきましたが、GRIからSDGsとGRIガイドラインの対照表(注4)が公開されていることを鑑みれば、2016年度のCSR報告書ではSDGsを参照して自社の課題や目標を公開する企業が増えることが期待されます。とりわけグローバル化を加速する日本企業にとって、SDGsを自らの企業活動と整合させていく意義は、非常に大きいと考えておくべきでしょう。

(注1)持続可能な開発目標
http://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/15775/
(注2)SDGコンパス
http://sdgcompass.org/wp-content/uploads/2015/12/019104_SDG_Compass_Guide_2015.pdf
※なお、日本語版は2016年3月に国連グローバル・コンパクトネットワークジャパンのサイトに公開されている。
http://www.ungcjn.org/gc/pdf/SDG_COMPASS_Jpn_0318_30P.pdf
(注3)SUSTAINABILITY AND REPORTING 2025
https://www.globalreporting.org/information/Pages/Reporting-2025.aspx
(注4)Linking the SDGs and GRI http://sdgcompass.org/wp-content/uploads/2015/09/SDG-Compass-Linking-the-SDGs-and-GRI.pdf
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ