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IoTの成長戦略に必要なもの

2016年05月24日 井熊均


 政府が成長戦略の素案を発表し、筆頭に第四次産業革命を掲げました。AI、IoTと呼ばれる次世代のITを使って様々な分野の生産システム、サービスシステムを革新しようということです。自動車分野では衝突制御装置があっという間に普及しました。数年もすれば、自動駐車、高速道路などでの車線変更制御などのシステムが普通に装備されるようになっているでしょう。制御システムの普及を見て驚くのは、導入コストが予想外に低く、多くの企業が実行できることです。それだけ、センサーやCPUなどの技術基盤が急速に進歩し普及しているのです。IoTを実現するための要素技術は、既に実装されるのを待つ段階にあると言えます。
 ここで二つのことを指摘したいと思います。

 一つは、成長戦略や事業戦略で注目すべきなのはオペレーションシステムと制御以外のハードウェアであるということです。制御システムをハードウェアの付加価値にしようとすると競争力を失う可能性があります。上述したように、現在でも、自動車の制御システムで差別化できる期間は長くありませんが、リードタイムは今後ますます短くなっていきます。そこに焦点を当てると国際競争力を失ったデジタル機器の二の舞になるリスクがあると思います。

 もう一つは、雇用創出と規制緩和を一体で進めることです。現在の規制や基準は、人間が管理することを前提に作られているので、AIやIoTを導入するためには根本的な見直しが必要です。一方、だからと言って、既存の事業者の声を無視した規制緩和を進めることが正しいとは言えません。既存の制度の下で多くの人が働き、生活を営んでいることを無視してはいけないのです。AIやIoTが次世代を拓く技術であるなら、規制の下で生きてきたビジネスがどのように変革、発展できるかを示すのも、成長戦略の重要な役目だと思います。


※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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