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地方公共団体におけるPPP/PFI推進のあり方 
~先進諸国に学ぶべき教訓~
【第1編】

2016年04月12日 林倫子


【第1編】
1.はじめに ~わが国のPPP/PFI推進の現状~

 PPP(Public Private Partnership)とは、公共と民間が連携して公共サービスの提供を行うスキームを意味する幅広い概念である。また、PFI(Private Finance Initiative)とは、民間の資金やノウハウを活用して、公共施設等の設計・施工・維持管理および運営を効率的かつ効果的に実施するPPPの代表的な手法の一つである。
 平成11年のPFI法施行から15余年が経過した今日、わが国におけるPPP/PFIの政策的重要性は一層高まり、政府の成長戦略および財政健全化に向けた主要な政策の一つと位置付けられている。「日本再興戦略 改訂2015」(平成27年6月30日閣議決定)においては、「PPP/PFI は、ビジネスチャンスの創出、民間の創意工夫を活かした住民へのサービス向上、効率化による公的負担の軽減の一体的な実現を可能とするものであり、「一石三鳥」である。」とうたわれており、PPP/PFIの全国的な取り組みを加速させるための数値目標設定や規制緩和等への迅速な対応を行うとされている。
 一方で、地方公共団体におけるPPP/PFIの推進状況は、まだまだ道半ばである。国交省が実施したアンケートによれば、PPP/PFIを推進している地方公共団体は(平成25年10月実施。回答数は全国1,789地方公共団体のうち、1,138団体)15%にとどまっており、65%の団体では、今後推進する具体的な予定はないと回答している。
 このような状況を打開するための具体的な施策として、地方公共団体がPPP/PFIを推進するための産・官・学・金による「地域プラットフォーム」の設立に対する支援措置が、内閣府や国土交通省によって実施されており、地方公共団体の体制整備を進める動きが高まっている。また、昨年12月には「多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針」(平成27 年12月15日民間資金等活用事業推進会議決定)が発表され、各省庁および地方公共団体に対して、多様なPPP/PFI手法の導入が適切かどうかを優先的に検討するための手続きや基準等の整備について、通知がなされたところである。まさに全国津々浦々でPPP/PFIを推進するための政策が総動員されているといえる。
 PPP/PFIを推進する枠組みや規程の整備が進むことは重要である。一方で、筆者は、今後、地方公共団体レベルにおいて質の高い事業を持続的に生み出していくためには、以下のような点について、さらに検討を深めていく必要があると考える。

(1)PPP/PFIを推進する持続的な体制のあり方
 PPP/PFIは複雑な事業スキームであり、特に中小規模の地方公共団体においては、人材やノウハウが不足しており、PPP/PFIは公共側の事務負担が重いことが、PPP/PFI推進上の障害になっているといわれている。
 地方公共団体が、自らの力で持続可能なかたちでPPP/PFIを推進していくために、国(内閣府PFI推進室や国土交通省、総務省等)はどのような支援を行うべきか。そして、「地域プラットフォーム」は、今後どのような組織体として発展していくべきか、長期的な視点で考えていく必要があろう。

(2)PPP/PFI推進におけるリスク分担のあり方
 わが国のPPP/PFI推進上の課題として、公共による割賦払いが中心のいわゆる「サービス購入型」のPFI事業が、PFI事業全体の大半を占めており(平成24年度までの実績では全体の73%)、民間が外部収入を得る「独立採算型」や「混合型」事業(公共施設等運営権制度(いわゆるコンセッション)を含む)の件数が伸び悩んでいることが挙げられる。国は、コンセッションや事業収入等で費用を回収する事業等を伸ばしていくことを目標として掲げているが、地方公共団体レベルにおいては、そこまで機運が高まっていないように思われる。
 「独立採算型」や「混合型」事業等を推進していくにあたっては、どのような突破口が必要か。PPP/PFIの概念の根底にある「官民の適切なリスク分担」という考え方に立ち戻って議論をすることが有益だろう。

(3)PPP/PFI導入にあたっての評価の視点
 わが国におけるPFI導入初期は、財政負担の削減や行財政改革のツールといった観点に重きが置かれていた。一方で、現在、PPP/PFIには、単なる財政の効率化だけではなく、民間のビジネスチャンスの創出や公共サービスの向上といった「成長のドライバー」や「バリューアップ」となることが期待されている。
 しかしながら、現在のPPP/PFI導入にあたっての評価の考え方は、基本的にPFI法施行当初から変わっておらず、公共が直接実施するよりも効率的かつ効果的に公共サービスを提供できるかどうかを検証する「VFM(Value for Money)の算定」のプロセスにおいては、公的負担削減効果の定量化が主な算定対象となっている。PPP/PFIに期待される役割の変化とともに、評価の考え方を見直していく余地はないだろうか。そうすることで、民間の柔軟な視点から、PPP/PFIに係る新たな発想や提案が生まれる素地を作り出すことが期待されよう。

 上記の論点について考える出発点として、わが国よりも先行してPPP/PFIの推進を行ってきた諸外国におけるこれまでのPPP/PFI政策の変遷や直面してきた課題を振り返ることが有益である。本稿においては、PFI発祥国である英国を中心としたPPP/PFI先進国の変遷と現状から、わが国への示唆を得ることを試みる。



※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません






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